【知らなかったでは済まされない⁉】その“躾”、“マルトリ”かも? マルトリの危険性を徹底解説!

「あなたのためを思って言ってるのよ」「しつけだから我慢しなさい」。

親からそう言われた経験はありませんか?

あるいは自分自身が親として、子に対してこのような発言をしたことはありませんか?

育児は常に手探りで、正解がありません。時には「自分の対応は本当に正しかったのだろうか?」と自問自答することもあるでしょう。

子どもを育てる上で「しつけ」は必要不可欠です。しかし、しつけと称して子どもを支配し、過度なプレッシャーをかける行為は、「マルトリートメント(略してマルトリ)」と呼ばれる虐待に該当することがあります。

「そんなの大げさでしょ」「昔は普通だったじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、近年の研究では、マルトリが子どもの脳や心に深刻な影響を及ぼし、大人になってからもトラウマとして残ることが明らかになっています。

では、具体的にどのような行為がマルトリに当たるのか? そして、私たちはどうすればマルトリを防げるのか? 本記事では、マルトリの危険性とその回避策について詳しく解説していきます。

マルトリとは

マルトリとは

マルトリートメント(Maltreatment)、通称「マルトリ」は、子どもに対する不適切な扱いや虐待を指します。

1980年代にアメリカで広がった概念で、日本語では「不適切な養育」と訳されます。厚生労働省では「大人の子どもへの不適切な関わり」と定義しており、児童虐待の意味を広く捉えた概念です。

単なる体罰や暴力だけではなく、言葉や態度、無視といった心理的な影響を与えるものも含まれます。

また、世界保健機関(WHO)は、マルトリートメントを次の4つのカテゴリに分類しています。

1.身体的虐待(Physical Abuse)

・殴る、蹴る、叩くなどの暴力
・怒りにまかせて手をあげる
・食事を与えない、閉じ込める

2.精神的虐待(Emotional Abuse)

・「お前はダメな子だ」など、人格を否定する発言
・無視や冷たい態度をとる
・子どもの存在を否定するような言動

3.ネグレクト・育児放棄(Neglect)

・子どもの基本的な欲求(食事、衣服、衛生など)を満たさない
・感情的なサポートを怠る
・病気になっても医療を受けさせない

4.性的虐待(Sexual Abuse)

・子どもに対する性的な行為や言動
・不適切な身体接触
・性的な話題を強制する

「うちは暴力をふるっていないから大丈夫」と思う人もいるかもしれません。しかし、精神的虐待やネグレクトも、子どもの発達に深刻な影響を及ぼすマルトリに該当するので注意が必要です。

たとえば、不機嫌な時に子どもに辛くあたったり、子どもが何かを要求してきたときに「今忙しいの! 見てわからないの⁉」と大きな声で言ったり。あるいは、子どものミスに対して「バカなんじゃないの?」と言い捨てたり。

暴言か否か微妙なこうした言葉も、子どもの心を深く傷つけるマルトリです。

つまり、機嫌や感情や性格など親の都合で子どもを攻撃する行為はよくありませんよ──ということ。子どもが何か失敗をしたなら、同じ失敗を繰り返さないように適切な方法を教えてあげるのが「教育」であり、子どもを攻撃するのは「虐待(つまりマルトリ)」になります。

マルトリの具体例

マルトリ,しつけでは、日常生活の中でどのような行為がマルトリに当たるのでしょうか? 具体例をご紹介します。

「しつけ」の名のもとに行われる体罰

「叩かないとわからない子だから」「昔はみんなそうだった」

そう思っている親は少なくありません。しかし、研究によると体罰を受けた子どもは、暴力的な行動をとる可能性が高まり、抑うつや不安障害のリスクも上昇することが分かっています。

子どもの人格を否定する言葉

「なんでこんなこともできないの?」「お前なんて生まれてこなければよかった」「本当にバカだな」

こうした言葉は、子どもの自己肯定感を大きく損ないます。大人は冗談や指導のつもりでも、子どもは深く傷つき、それが一生のトラウマになることもあります。

無視や愛情の欠如

・話しかけても無視する
・目も合わせない
・感情表現を抑え、「お母さん(お父さん)は疲れてるから」と子どもを拒絶する

親が疲れている時、つい子どもを適当にあしらってしまうことはあるかもしれません。しかし、無視は「お前には価値がない」と伝える最も強力な虐待なのです。

マルトリを防ぐには?

マルトリを防ぐには?

では、どうすればマルトリを防ぐことができるのでしょうか? 親として意識しておきたい3つのポイントについて解説します。

1.「しつけ」と「虐待」の境界線を知る

・しつけ…子どもの成長を助けるために必要な指導
・虐待…子どもの心や体を傷つける行為

たとえば、「宿題をしなかったらゲーム禁止」はしつけですが、「宿題をしなかったから夕飯抜き」は虐待に近い行為です。

子どもが「恐怖」ではなく「理解」によって学ぶ環境を作ることが重要です。

2.親自身のストレスを管理する

「子どもに厳しくしすぎてしまう……」と感じる親の多くは、自身がストレスを抱えていることが多いよう です。

自身のストレスを上手に管理するために、以下の点を意識しましょう。

・適度に休む(一人の時間を確保する)
・相談相手を持つ(信頼できる友人やカウンセラーに話す)
・完璧な親を目指さない(子どもと一緒に成長すればOK!)

3.子どもの気持ちに寄り添う

子どもの気持ちに寄り添うために、以下を意識してみましょう。

・子どもの話をじっくり聞く
・「怒る」ではなく「説明する」
・愛情を言葉やスキンシップで伝える

「忙しくてそこまで手が回らない……」という人もいるでしょう。大切なのは、「子どもの気持ちを理解しようとする姿勢」 です。完璧じゃなくても、「少しでも気にかける」ことが、子どもの心を守る第一歩になります。

「しつけ」と「マルトリ」を正しく見極めよう

「しつけ」と「マルトリ」を正しく見極めよう

マルトリは、子どもの心と体に深刻なダメージを与える虐待の一種です。しかし、多くの親は「しつけのつもり」で気づかずにやってしまっていることが多いのが実情です。

以下の点に気をつけて、無自覚のままマルトリで愛する我が子の心に傷をつけてしまわないよう気をつけましょう。

・体罰や暴力はしつけではなく、子どもを傷つける行為
・人格否定や無視も「精神的マルトリ」になる
・親自身のストレス管理も、マルトリを防ぐ重要なポイント

また、もし「私は毒親かもしれない……」と感じたとしても、決して自分を責めないでくださいね。親も人間です。大切なのは、「少しずつでも子どもとの関わり方を変えていくこと」 です。

筆者も、我が子に対して不適切な接し方をしてしまったことがあります。自分の行動が不適切だと感じたらすぐに息子に謝罪し、二度と同じ過ちを繰り返さないことを約束しました。

きっとこれからも、反省する機会はいろいろとあるのだと思います。でも、筆者はそんな自分を恥じていませんし、むしろ親として以前に人間として正しい姿勢だと思っています。

間違ってしまっても、きちんと謝罪して反省し、行いを正すこと。こうして親自身も成長していくことが、とても大切だと思うのです。

子どもが安心して「自分は尊重されている」「自分は愛されている」と思える環境を作ることこそ、もっとも大切なしつけなのかもしれません。

Written by はるお

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