不思議な存在を感じたり、見えない「友達」と会話したりする子供の姿に驚かされたことがある人は、意外と多いのではないでしょうか。
筆者の知人のお子さんにも、そんな子が数人いました。
「子供には霊感があるのではないか」とつい思ってしまうようなエピソードは、世界的に見ると枚挙に暇がありません。事実、「子供は霊感が強い」という言い伝えが世界各地にあり、スピリチュアルな世界では一般的な見解とされています。
今回は、子供の冷感について考察するとともに、実際に起こった驚きのエピソードをご紹介します。
皆さんは「霊感」を信じていますか? あるいは持っているでしょうか?
零(ゼロ)感の筆者は幽霊や心霊とはてんでご縁がないようで、これまでに心霊的な体験をしたことがほとんどありません。しかし、幼児期や小学校低学年の子供たちが特殊な感覚をもっているという話は、誰しも耳にしたことがあるはずです。
子供は本当に霊感を持っているのでしょうか?
そもそも子供に霊感があるといわれるのは、物事を合理的に解釈したり判断したりする能力が未熟であるから。
それこそ、誤解や勘違いで幽霊らしきものを見たつもりになってしまっており、表現力が未熟なため、子供なりに表現したものを大人が一方的に霊的なものと拡大解釈してしまう──といったケースが多いのではないかと、筆者は考えています。
また、発達心理学では、幼い子供の脳は情報処理の方法が大人と異なるとされています。
一般的に人間の脳は成長とともに周囲の環境や価値観に合わせてさまざまなフィルターが働くようになります。しかし、子供たちはまだそのようなフィルターが少ないため、直感的な感覚が鋭く、他者の感情やエネルギーを敏感に察知できるといわれているのです。
こうした子供の直感力が「霊感」のような働きをすると考えられていますが、科学はこうした「子供の霊感(らしきもの)」をどのように解釈するのでしょう?
次項では、子供の霊感について科学的な視点で言及してみましょう。
科学的な視点だと、子供が「霊感」を感じるように思えるのは、脳の発達と認知の仕組みによるものと考えることができます。
たとえば、子供は想像力が豊かで、現実と非現実の境界がまだ明確でないため、「空想の友達」と会話をするケースが珍しくありません。子供が姿の見えない友達と会話するシーンは、多数のホラー映画のワンシーンとして採用されています。つまり、世界的にそれだけ普遍的に見られる事象なのでしょう。
しかし、子供のこのような行動は、科学的には幼少期に見られる正常な発達段階の一つとされています。
また、心理学の観点だと、子供たちが「不思議な体験」を報告する背景には、彼らが無意識のうちに周囲の大人たちの期待や興味を感じ取り、それに応じて行動するケースがあるとも考えられています。
たとえば、親が「この子は霊感が強い」と感じている場合や、子供に霊感など特殊な力を期待している場合、子供は親の期待に応えようと、無意識的に「霊感的な体験」を話す──といった具合です。こうしたケースにより、「我が子には霊感がある」と勘違いする親は、一定の割合で存在しているはずです。
さらに、覚醒状態にある子供は感覚が研ぎ澄まされるため、大人には気づけない微妙な変化を感じ取ることができることも、科学的な研究によりわかっています。
つまり、子供は霊的な存在を感じているのではなく、鋭敏な五感により霊的なものを感じている可能性もあるということです。
子供の霊感は、これらの複数の要素が複雑に絡み合い、表出するものとは考えられないでしょうか?
子供の霊感を科学的に説明できるとはいえ、世の中には不思議なエピソードがたくさんあります。
ここでは「科学的に説明されてはいるものの、不思議さを感じずにはいられない子供の霊感エピソード」をご紹介します。
米国の心理学者であるドリス・コーエン博士は、子供が「親しい人の気配」を感じたというケースに注目しています。
ある子供が、離れて住んでいた祖父の存在を強く感じたため母親に報告しました。実は祖父が同時刻に危篤状態だったことが後にわかり、母親は不思議な体験として記録したといいます。
このような体験は、科学的には「シンクロニシティ」として説明されることがあり、特に感受性の強い子供に起こりやすい現象と考えられています。
心理学では、「空想の友達」が研究対象になる分野があります。
とある研究では、特に2~6歳の子供は特に空想と現実があいまいになりやすいとされています。
米国の心理学者マージェリー・テイラー博士は、2,000人を超える幼児を対象に「見えない友達」に関する調査を行いました。
研究の中では、子供たちが「友達が見える」と報告する際、それが「霊的な存在」ではなく、脳の成長過程で自分を守り育むための心的メカニズムとして働いていることが示唆されています。
つまり、「見えない友達」は霊的な存在ではなく、子供が安心感を求めるための自然な表現の一つと解釈されているわけです。
ある実験的研究では、感受性の高い子供たちがどのように音や光、その他の感覚的刺激に反応するかが調べられました。
特に、大人が気付かないような微細な動きや音を、鋭敏な感覚を持つ子供が捉えることで、非現実的な「何か」の存在を感じ取る原因になり得る──という説が報告されているのが興味深いところです。
スタンフォード大学の心理学者らが実施したこの研究によると、聴覚や視覚の感受性が高い子供たちは特に「何かがいる」という感覚を持ちやすいとされています。
中には親に「誰かがいる」と報告するケースもあり、こうした子供の報告を親や周囲の人間が「霊感」と判断する場合があります。
子供の霊的な体験は、科学的な説明が可能な場合もあれば、まさに不思議な出来事としか言いようのないものもあります。
子供の豊かな想像力や鋭敏な感覚が原因であると考えられている一方、大人には見えないものが子供には見えるというエピソードは、人間の知覚や認識の不思議さなど人体の神秘を感じざるを得ません。
科学で完全に説明できない分野だからこそ、こうしたエピソードにはどこかロマンがあり、古今東西多くの人を惹き付けるのかもしれませんね。
・参考文献:Jung, C. G. (1973). Synchronicity: An Acausal Connecting Principle. Princeton University Press.
・参考文献:Cohen, D. (2000). Repetition: Past Lives, Life, and Rebirth. Hay House.
・参考文献:Taylor, M. (1999). Imaginary Companions and the Children Who Create Them. Oxford University Press.
・参考文献:Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-Processing Sensitivity and Its Clinical Implications.
Written by はるお