仕事のことや恋愛のことでなにか辛いことが起こったとき、その泣きたい気持ちや辛さの原因は、相手にあるのではなくあなた自身にあります。
泣きたいくらい辛いあなたを責めているわけではありません。きっとあなたの上司がひどい人なのだろうと思います。あなたの彼氏が、あなたの乙女心を踏みにじっているのだろうと思います。
でも、上司や彼氏がどうであれ、あなたがあなたの人生に絶望しているから、あなたは泣きたいし辛いのです。人になにをされても、なにを言われても、自分で自分に絶望しない人はそこまで辛さを感じないからです。
自分の人生に絶望するとどうなるのか。世間へのなじめなさを感じるようになります。それがひどくなると、引きこもりになります。
本項では、世間へのなじめなさとどう向き合えば再び希望が持てるようになるのかについて、一緒に見ていきたいと思います。
世間へのなじめなさは「隠すこと」によって生まれます。
たとえば、彼氏とうまくいかなくて泣きたいほど辛いとき、それを友達にぶっちゃける人と、一人で抱え込む人がいますよね。
ぶっちゃける人の心はわりと元気です。女子トークでぶっちゃけて、気持ちがすっきりして、さて明日も頑張って生きようと思っておしまいです。
反対に一人で抱え込む人は、世間へのなじめなさを感じるようになります。彼氏の自分に対するふるまいに不満を抱き、そういう彼氏に対して不満を抱いている自分に不満を抱きます。
一人で抱え込む人は、大抵の場合自尊心が強いため、どんなに不満を抱えてもそれを他人に見せようとしません。むしろ他人の目に触れないように隠そうとします。
このような隠蔽体質が続くと、自分のなかのネガティブな感情を誰かに見られると恥ずかしいという考え方が当たり前になり、ますます隠すようになるのです。
で、隠すことに疲れたら、「誰にもバレないように」相談しようとします。たとえば、電話占いなどで占い師さんに話を聞いてもらうと、その瞬間だけ気持ちがすっきりするので電話占いに依存するようになり、気が付くと借金してまで電話占いにのめり込むようになるのです。
諸悪の根源はあなたの隠蔽体質であり、電話占いではないのは言うまでもないことです。
世間へのなじめなさを感じる人は、「本当は私はこんなふうに生きていくべきだ」という強い思いがある人です。だから、「本当はこうあるべき自分」と「今の自分」を比較して葛藤する(=つまり世間へのなじめなさを感じる)のです。
「本当の私の生き方」とは、いわば使命感です。ほら、法要のときなんかに、お坊さんが「人は使命をもって生まれてきます」とか言う、その使命です。
神様があなたに言っていることを、実はあなたの心は知っています。その使命にまっすぐ正直に生きていくことが「善いこと」であり、その使命を知らないふりをする自分や、知ろうとしない自分を「善くないもの」と思っています。だから葛藤します。
葛藤しない自分を手に入れようと思っても、それは無理なのです。葛藤する自分を、もう一人の自分が「私は葛藤しているなあ」と思って見てしまうのが人間なのだから、仕方のないことです。
ではどうすれば、泣きたいほどの辛さは消えてなくなってくれるのでしょうか?
話は再び隠蔽体質に戻ります。
誰か気のおけない友達に、自分の悩みを打ち明けること。泣きたいほどの辛さをもっている自分を恥ずかしいと思わないこと。これに尽きます。
ではどうすれば、友達に悩みを打ち明けられる体質になるのでしょうか。どうすればそんな自分を恥ずかしいヤツと思わずに済むのでしょうか?
答えは、「今」や「私」の存在の奇跡性を知ることです。と書くと、難しく感じますよね?
今という時制は、今であるというだけで奇跡的なのです!
この世にあまたの人がいる中で、あなたは、たとえば隣のA子ちゃんではなくあなたである――これって実はすごいことなんです!
と書いても、わかる人にはわかるし、わからない人にはもっと説明が必要でしょう。なので以下に解決法だけをまるっと書きます。
五感を研ぎ澄まして、「今」肌で風を感じるとか、「今」夕陽の美しさを愛でるとか、「今」遠くの家々の灯りを見つめるとか、そうすることで、少しずつあなたを苦しめている隠蔽体質は改善されていきます。つまり、奇跡に気づきます。
もっと具体的にいうと、泣きたいくらい辛いときとは、心が過去につなぎ留められている状態なのです。過去と一人で対話している状態なのです。それも楽しかった過去ではなく、自他のことを恨みたい過去です。だから、泣きたいほど辛いのです。
対して、「今」を感じるとは、過去ではなく現在です。
人は今を今として生きている時のみ、泣きたいほどの辛さから解放されます。なぜか人はそのようにできているのです。
この「なぜか」の理由は、脳科学が解明するよりも、究極的には科学ではなく哲学の分野において解決されることなのかもしれません。
ともあれ、今の今性に驚くこと!
これが泣きたいほど辛いときに、心を軽くする方法です。
※参考 『死に至る病』キルケゴール/鈴木祐丞訳(講談社)2017年
Written by ひとみしょう