理不尽なことを言われたとき、つい声が大きくなったり、ため息で不満を伝えたりしてしまうことは誰にでもあります。一方で、腹が立つ場面でも落ち着いて気持ちを伝えられる人がいるのも事実です。今回は、育ちがいい人の怒り方に見られる共通点と、上手に怒るためにできることを紹介します。
育ちがいい人は、カチンとくる言葉を投げかけられても、すぐに言い返すことはしません。「ちょっと考えさせてね」「あとで改めて話してもいい?」と、いったん時間を置きます。LINEやメールでも同じで、腹が立つ文面にはすぐ返信せず、一晩置いて読み直してから送ります。
怒りの感情は、ピークを過ぎると少しずつ落ち着いていくもの。勢いで口にした言葉はあとから取り消せないことを、よく知っているのでしょう。
育ちがいい人の怒り方は、相手を責める言葉から始まりません。家事を手伝わない夫に対しても、「なんでいつもやってくれないの?」ではなく、「お皿洗いをお願いできると、すごく助かるんだけど」と伝えます。
「なんで」から始まる言葉は、相手を言い訳か反撃のどちらかに向かわせがちです。してほしいことを具体的に伝えるほうが、結果として望む行動につながりやすいのです。
育ちがいい人が誰かに注意をするのは、周りに人がいない場面です。会議中に部下のミスに気づいても、その場では受け流し、終わってから「さっきの資料のことで、少しいいかな」と声をかけます。
私の新人時代の上司が、まさにこのタイプでした。取引先の社名を間違えたまま資料を出してしまったとき、会議では何も言わず、あとで会議室に呼ばれて「次からは提出前に一緒に確認しようね」と言われたのです。皆の前で恥をかかずに済んだことに、今でも感謝しています。
育ちがいい人には、怒るときに「前もそうだったよね」と過去の話を持ち出さないという特徴もあります。話題にするのは、あくまで今目の前で起きている一件だけです。
過去を蒸し返されると、相手は今回の件より「ずっと根に持たれていた」ことのほうに気を取られてしまいます。「いつも」「毎回」といった言葉を使わないのも、同じ理由からです。伝えたいことが一つに絞られている分、相手も素直に受け止めやすくなるでしょう。
育ちがいい人によく見られるのが、怒ったあとの切り替えの早さです。話し合いが終われば、翌朝には「おはよう」といつも通りの笑顔で挨拶をします。相手から謝られたら「わかってくれてありがとう」と受け止め、それ以上は追及しません。
何日も口をきかない、わざと素っ気なく返すといった態度は、怒りを長引かせるだけかもしれません。きちんと伝えたあとは引きずらないというけじめのよさが、周りからの信頼にもつながっています。
イライラした直後は、自分が何に怒っているのかがはっきりしないことが多いものです。そんなときは、スマホのメモに「本当はどうしてほしかったか」を一行で書き出してみてください。
「LINEの返信が遅くて腹が立った」なら、「遅れるなら一言ほしかった」というように、怒りの奥にある希望が見えてきます。相手に伝えるのは、この希望のほうです。
仕事から帰ってきた夜や空腹のときは、ささいなことでも感情的になりやすくなります。言いたいことがあっても、その日のうちに決着をつけようとせず、「明日の朝、少し話せる?」と時間を改めるのがおすすめです。
朝の落ち着いた時間なら、同じ内容でも穏やかなトーンで伝えられます。どうしてもその場で伝えたいときは、「今ちょっと疲れてて、言い方がきつくなるかも」と前置きするだけでも、相手の受け止め方が変わります。
腹が立つと、ドアをいつもより強く閉めたり、聞こえるようにため息をついたりしてしまうことがあります。言葉にしない分、本人は怒っていないつもりでも、周りにはしっかり伝わっているものです。
まずは「今、ため息をついたな」と自分で気づくことから始めてみましょう。気づけるようになると、不機嫌を態度で示す代わりに、言葉で落ち着いて伝えようと意識が向くようになります。
育ちがいい人の怒り方に共通しているのは、怒りをそのままぶつけるのではなく、相手に伝わる形に整えてから届けていることです。時間を置き、言葉を選び、場所やタイミングにも気を配っています。そうした配慮があるからこそ、怒ったあとも関係が崩れません。
次にイラッとしたときは、言い返す前に「本当はどうしてほしいのか」を考えるところから始めてみてください。
Written by 有紗