好きな人と付き合うのが怖いという気持ちは、いろんな意味を含み持っていますね。
たとえば、好きな人に告白して断られたら自分が傷つくから怖い、という意味。
あるいは、告白するのは怖くないけど、好きな人と付き合ったとき、その人の嫌なところに幻滅してガッカリする自分を見るのが怖い、という意味もあるでしょう。
ほかにもいろいろな意味がありますが、それらすべての「いろんな意味」は、じつはある1点において共通しているのです。
1. もうひとりの自分という存在
ある1点とは、もうひとりの自分が存在している、ということです。
付き合うのが怖いと思う自分を、もうひとりの自分が見ている――具体的には、付き合いたいと思う自分と、付き合うのが怖いと思うもうひとりの自分とが葛藤していて、その葛藤に答えを出せないでいる。これが「怖さ」の原因なのです。
たとえば、告白できない人であれば、告白したいと思う自分がまずいますね。同時に、そう思う自分に対して、「でもさ、告白して断られたら傷つくよね」と思う「もうひとりの自分」がいますね。
両者は、なんらか自分が感覚的にしっくりくるの答えが出るまで絶えず(それこそ24時間ずっと)葛藤を続けますよね。
付き合ったのちに好きな人の嫌なところが見えてしまって、幻滅するのが怖い、という場合も同じです。
彼と付き合いたいと熱望する自分と、「でも付き合って相手に幻滅したときが怖い」と思う「もうひとりの自分」とが葛藤している――だから「なんとなく怖い」という気持ちが消えない、ということなのです。
2. さっと告白して付き合ってしまう人とはどんな人?
ちなみに、付き合うのが怖いと思うことなく、さっと告白して付き合って、楽しくやっている人っていますよね?
そういう人は葛藤したことがないのか、といえば、そんなことはありません。
そういう人も、そういう人なりに葛藤し、悩みました。が、結果的に、好きな人と付き合って、なにかに恐れをなすことなく楽しく自由に恋愛を謳歌しています。
うらやましいですか? そういう人になりたいですか? そういう人の「からくり」を知りたいですか?
そういう人は、「現実的なもの」が、人並み外れて好きなのです。だから、いろんな葛藤があっても、それを短時間で消し去って、さっと告白して、さっと付き合えているのです。
「現実的なもの」とは、たとえば、イケメン。自分にとってかっこいいと思える男子と一緒にいることが、三度の飯よりも好きなのです。
あるいはお金。あるいは自分が気持ちよくなれるエッチな行為。
現実的なものと、付き合う怖さとの間で、いろんな葛藤があっても、現実的なものが人並み外れて好きな人は、やがて葛藤することがどうでもよく思えてくるのです。
――こんなことでぐずぐず悩んでいるくらいなら、さっと告白して、イケメンを(お金を/気持ちいい行為を)選んでしまったほうが「自分が楽しい」。
さっと告白してさっと付き合ってしまう人は、こんなふうに考えているのです。だから「付き合うのが怖くない」のです。
3. 葛藤が消える方法その1
さて、付き合うのが怖いと思っている人、言い方を換えれば、葛藤している人は、本来的には、どうすれば葛藤が消えてなくなってくれるのでしょうか?
これについては、キルケゴールという哲学者が、さまざまなことを言っています。
たとえば、「自分がこの世に生まれてきた使命を、なとなくでもいいから感じなさい」と言っています。
使命とは、たとえば、自分は立場の弱い人のために手を差し伸べるためにこの世に生まれてきたのではないかと思える気持ちのことです。
あるいは、他者を楽しませることで、他者の不安や悩みを解決してあげるためにこの世に生まれてきたのではないか、といった気持ちのことです。
なんとなくであってもいいので使命がわかっている人は「自分が生きる基盤」がしっかりしているので、そういつまでも葛藤しないのです。たくさんの不安を抱えないのです。
人生の基盤、ベースがあるというのは、その意味において、ものすごく大切なことなのです。
一般的には、子どもの意思を否定することのない両親のもとに育てば、人生の基盤がしっかりとしたものになり、その子は過度に不安を抱かない、また、他者に対して必要以上に人見知りしない子になると言われていますね。
育てられ方なんて、そんな過去のことは今さら変えようがない?
たしかにそうですね。
でも今からでも遅くないです。自力で「使命」を感じることで、人は少しずつ「強い人」になります。その生き様が、あからさまに恋愛に影響を及ぼします。
つまり、怖さを感じることなくさっと告白してさっと付き合っている人は、「恋愛がうまい」人ではないんですね。
恋愛という「目に見える行為」の奥に、じつは「自分はこう生きる」という、安定感ある生き様があるのです。
4. 葛藤が消える方法その2
葛藤が消える方法の2つ目は、「たまたまだ」と思うくせをつけることです。
好きな人に告白する怖さや、付き合う怖さを感じる人って、「自分が努力しないと告白できないし、付き合えない」と思っていますね。
でも世の中、自分の努力だけで好きな人と付き合えるわけではないのです。
たまたま偶然、好きな人と飲み会で隣の席になって、それがきっかけで付き合うようになった、ということって「ふつうに」ありますよね?
あるいは、たまたま偶然、好きな人と飲むことになって、たまたま偶然、流れでお泊りすることになった(このラッキーさよ!)なんてこともありますよね。
つまり、付き合うことに恐れをなす人とは、マジメなんです。「自分が努力しないと付き合えない」と思っているから。
そうじゃないんですよ。世の中の幸運は「たまたま」もたらされるものなのですよ。
だから、果報は寝て待つといいのです。すなわち、「いつか好きな人と付き合えるだろう。
付き合ってもしその人のことが嫌になっても、またたまたまなにかが起きて、いい塩梅に関係が修復されるだろう」と「思っておく」ことが大切だということです。
5. 「考える」ではなく「感じる」努力を
キルケゴールという哲学者は、「付き合うのが怖い」という気持ちを、端的に「不安」という言葉で表し、『不安の概念』という本を書きました。彼もものすごく「こわがり」だったのです。彼は自分の経験から、つまり、人生を賭して「不安」について考えたのです。
その彼は、究極的には、「考えることも大切だけど、感じることも大切だよ」と言っています。
考える、というのは、頭で言葉を使って考えるということです。「付き合うのが怖い」と悩む、というのは、つまり「考える」ということです。
そうじゃなくて、五感を使って、なにかを感じてごらん――彼はこう言います。
あなたが「付き合うの、怖い」と思い悩んでいるその瞬間にも、太陽は燦然と輝いています。その輝きを見上げ、深呼吸したら、なにかを感じますね。悩んでいることが馬鹿らしく感じられるかもしれませんね。
あるいは、「告白するの、怖い」と思い悩んでいるその瞬間に、好きな人は「誰か女子と飲みに行きたいなあ」と思っているかもしれませんね。
あなたが「今夜、飲みに行かない?」とLINEすれば、彼は「OK!」とLINEしてきて、付き合ったも同然の関係になれるかもしれませんね。
不安に思い、悩んでいるその瞬間に、好きな人のことを感じる(想像する)だけで、そのようなラッキーが起こらないとは限らないでしょう?
恋愛は、というか、人生は、今この瞬間にどっちを選ぶのか、というのがすべてなんです。
付き合うのが怖いと思って不安と同居し続ける方を選ぶのか、「まあ、なるようになるわ」と思って空を眺めるのかの二択なのです。
ポイントは、「今この瞬間」の「今」を「感じる」ことです。たとえば空を眺めること。
空を眺めるだけで好きな人と付き合えるかもしれない――こんなに簡単な方法って、ちょっと他にないと思いませんか?
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※参考 『自分を愛する方法』ひとみしょう(玄文社)2020(8月6日全国発売予定)