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アンジェラ・アキさん『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』に見る「男の弱点」とは?

アンジェラ・アキさん『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』に見る「男の弱点」とは?

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今月は卒業シーズンということで、卒業ソングをもとに、みなさんになにかをお話したいと思って、ネットで卒業ソングを探しました。

『遥か』もいいなあ、『YELL』もいいなあ、と思いつつ、結局、アンジェラ・アキさんの『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』を採り上げることにしました。

『手紙~』は、知っている人も多いと思うけれど、15歳のとても悩ましい「僕」が、未来の自分に向けて手紙を書くという設定の歌詞ですね。

ここで注意しておきたいのは、「僕」だからといって男歌ではないということです。

男子の中にある少年性と、女子の中にある少年性の両方に対して、つまり、男女の心に共通して存在する「少年の部分」を歌っているのが、『手紙~』だということです。

女性のシンガーが「僕」と歌う場合は、たいていこのパターンです。(と、売れない作詞家は言います。僕のことです)。

さて、今回は、その『手紙~』に、「僕」の弱点――拡大解釈して男の弱点を一緒に見ていきたいと思います。

言うまでもなく、女子の中の「僕」の弱点に対する指摘でもあります。

1. 人生のすべてに意味があると考える「弱さ」

アンジェラ・アキさん『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』に見る「男の弱点」とは?

この歌の最大のメッセージは、大サビ(王サビ……サビの王様)に書かれています。

すなわち、(著作権上、引用できないので要約すると)人生に起こるすべてのことには意味があるという考えが、この歌最大のメッセージです。

人生のすべてには意味がある……わりとよく耳にする言い方ですよね?

たとえば、受験に失敗した人に対して「人生のすべてには意味がある。だから、きみが受験に失敗したことにも意味があるのだ!」と言ったり言わなかったり。

でですね、じつは男って「人生のすべてには意味がある」と真正直に信じていたりするのです。

女子の中にもそう信じている人がいると思いますが、それは、その女子の心の中に住んでいる「少年の部分」である「僕」が、そう信じているということです。

人生のすべてには意味があるとする考えを信じるのはその人の自由ですが、いったんそう信じてしまえば、その信じる心がその人の弱点になります。

なぜなら、人生には、なんの意味もなく、本当にたまたま偶然起こった出来事が起こることもあるからです。

2. 「わたし、悩みなんてないし」という人の「強さ」とは

ちょっと話が飛ぶように感じられるかもしれませんが、「わたし、悩みなんてないし」みたいに、いつも楽しそうにひょうひょうと生きている人っていますよね?

「わたし」と書いたのは、そういう人は男より女子に多いと見受けられるからなんですが、人生のすべてに意味を見出そうと必死に悩むことなく「まあ、明日は明日の風が吹くし」みたいに思っている人っていますよね?

そういう人は、人生の前提条件を「意味」ではなく「たまたま」としていることが多いです。

生きている前提条件って、みなさん、あえて口にしないし、あえて相手に尋ねないから、自分以外の人がどのような前提条件を設定しているのかわからないかもしれないけど、でも、ひょうひょうと楽しそうに生きている人は「たまたま」を前提にしていることが多いです。

だからたとえば、失恋しても「たまたま」わたしのことを振る男だっただけであって、次につきあう彼氏はそうではないと、振られた直後に思えたりするのです。

反対に、人生は意味だらけと思っている人は、「なぜ振られたのか」その意味を延々と考えます。つまり、長い間落ち込んで、自分を磨こうと決意したり、占いに頼ったりと、はたから見てしんどそうな人生を歩みます(よね?)。

3. 「僕」はLINEの返信をすばやくできない

人生は意味だらけと考えている「僕」の特徴は、たとえば、LINEの返信が遅い、です。遅いとか、あるいは既読をつけても返信しないとか。

なぜ「僕」はLINEの返信くらいすばやくできないのでしょうか?

答えは、人生に意味を見出そうと必死だからです。

大胆に話を端折る(はしょる)と、人生に意味を見出すことに必死な人って、過去のことに心が縛られているんですね。

だから、「今」相手が求めているLINEの返信を「今」できないのです。

心を過去に縛られている人とは、「今」を過去として生きている人なので、「今」なにをすべきかが見えていないのです。

だからLINEの返信ごときにいつまでも時間がかかるのです。

これって、あきらかに「弱点」でしょう?

「今」を「今」として生きるというのは、たとえて言うなら、遠くの人にすっと「お~い!」と呼びかけるようなものです。

恥じらいも、ためらいも、嫌われてしまうかもという恐れもなしに、ただ単純に「お~い!」と言えばいいだけでしょ?

でも、「今」を過去として生きている人は、恥じらいもためらいも恐れも持ってしまうんですね。

だから素直に「お~い!」と言えない。

恋愛でいえば、自分の気持ちを相手に素直に伝えることができない。

この弱点って、恋愛に限らず、すべての人間関係に通じる「ヤバいほど強烈な弱点」だと思わないですか?

4. まとめ

アンジェラ・アキさんは、おそらく期せずして、「僕」の弱点を大サビ(王サビ)で歌いました。

ご本人は、きっと、Aメロ(平歌)やサビを「統括する概念」をサビの王様(=大サビ・王サビ)に書こうと思って、人生意味だらけ、みたいな歌詞をお書きになったのだと思います。大サビ(王サビ)って、ふつうはそういうふうに使うから。

でも、まさにそこが(人生意味だらけと考えるところが)「僕」の弱点だし、悩ましい青春のはじまりなのです。

そしてその悩ましい青春を「僕」の多くは、30歳くらいまで引きずるんですね。

すべてはたまたま偶然!

そう思えればいいのにね!

って、なにもチャカしているわけではありません。

人生に意味はないとする哲学的な立場がじつはちゃんとあり、(つまり、人生における意味のなさは哲学の世界においては論証済であり)、もしよければ、そういう本を読んでみてはいかがですか? ということです。

悩み多き春に「人生なんて『たまたま』の集まりにすぎない!」と思えれば、悩まずにすむどころか、すばらしい恋がはじまるかもしれないから。

※参考 永井均(1995)『翔太と猫のインサイトの夏休み』ナカニシヤ出版

5. おわりに

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