ご質問誠に有難う御座います。
今回は私の本の読み方をお話しさせて頂きたいと思います。
まず私は基本的に「この本が欲しい」と思った本は電子書籍で購入しております。
書店員であるご質問者様の神経を逆撫でするようで申し訳ないのですが「本を読むときは必ず買うこと。面白いと思った本は決して売らず捨てない」という方針の家で育った私にとって、実際の本を買うというのは限界が御座います。ですので家に保管しなければいけない本の冊数を減らすためにも電子書籍を多用しています。
とは言え、私も紙の本を買わないというわけでは御座いません。ただし、残念ながら私は「紙には紙の暖かさがある」とか「あの匂いが好き」というような理由は全くありませんので、これからお話しさせて頂く事情が変わった際には紙の本を買わなくなる可能性もあるでしょう。
“興味がない本”を何故なのかと不思議に思われるかもしれませんが、私の考えとしては“興味がない本”こそ買うべき本である、とすら思っております。
この理由をお伝えするためには、私の最も大切にしている考え方である「中庸」という言葉の意味を説明しなくてはならないでしょう。私は何よりも「中庸」こそが大事だと考えております。中庸というのは簡単に言えば「偏らない」ということ。
例えば、私が今読み途中の本は“文明崩壊 ジャレド・ダイアモンド著”で御座います。
このジャレド・ダイアモンドさんが書いた「銃・病原菌・鉄」という本が物凄く面白かったので「文明崩壊」も買ったのですが、この連鎖を続けて行くと私が読む本は間違いなく偏っていくことでしょう。
読む本が偏ると、それは思想が偏るということとほぼ同義。それは私の基本理念である「中庸」に反するので出来る限り読む本を偏らせないようにしている。
まず本屋さんに行くと、適当にぐるぐるしながら“面白そうな本”を手に取ります。そして立ち読みは一切しません。
立ち読みしてつまらないと感じてしまったら、さすがにお金を出す気が失せてしまう。すると自分の読む本が偏ってしまう。ですので立ち読みはしません。
そうやって4冊適当に本を選んだら、適当なコーナーに立って目をつぶり本棚に手を伸ばし手にとった本をその4冊の本に加えてレジへと向かいます。
以上が私の本の買い方で御座います。この最後の1冊の選び方が、電子書籍ではなかなか出来ないので、未だに私は本屋さんでも本を買うことをしています。
ちなみにこのやり方ですが、端的に言って物凄く“非”効率的であることは否めません。
本当に偶然面白い本と出くわすことも御座いますが、感覚的には90%くらいの確率で最後まで読み切ることなく本を閉じることになります。
しかし、こういうことをしないと人間は“興味がないジャンル”の本に手を伸ばすことがなくなってしまう。
読書なんて趣味ですから、読んでみて面白くないのであれば、それは別に最後まで読まなくても良いとは思うのですが、そもそもに“つまらない”と感じることすらなくそのジャンルと関わりを持たないのはあまり良いことではない、というのが私の考えで御座います。
このご質問に対して、具体的なタイトルを私はお伝えすることが出来ません。
何故なら、ご質問者様が普段どんな本を読んでいるか、ということが分からないから。
私が本をオススメするとしたら、それは私がオススメしなければ“絶対に読むことがないであろう本”をお勧めしたいのです。
ですので今回のご質問者様にお伝えしたいのは、具体的な本のタイトルではなく本の買い方。
本屋に行き、恋愛小説のコーナーに立ち、その中で「一番つまらなさそうな本」を選んでみましょう。
断言しますがその本は99%つまらないです。
そして99%、ご質問者様は「上野の意見なんて聞かなければ良かった……」と後悔をすることでしょう。
ですが「“つまらない”ということが判る」という経験と、奇跡的な1%に出会う可能性こそを、私はオススメさせて頂ければと思います。
面白そうな本なんて、私が何にも言わなくても読むでしょうから、ここは1つ「物凄くつまらなさそうな本」を読んでみましょう。
そういう無駄と遠回りこそが、意外と最短ルートだったりするものです。
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Written by ラブホスタッフ 上野