理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

ボルダリングが上手くなりたい!上達してもっと難易度の高い課題を落としたい!効率的なトレーニング方法が知りたい!という方のために、理学療法士/トレーナーの佐々木が体の構造や自宅でできるトレーニングをご紹介します。

第2回目の今回は「骨盤、股関節」についてです。

クライミングは手に意識が向きがちですが、上半身と下半身を繋ぐ骨盤、股関節は、体の中心にあり、非常に大切です!

骨盤、股関節を意識することで上半身と下半身を連動させて使えるようになります。そのため、下半身のパワーを伝えやすかったり、保持力を温存することも可能になります。

自宅でも行えるメニューを選びましたので是非お試しください!

骨盤、股関節について

まずは骨盤、股関節についてご説明します!

骨盤と股関節はセットで動くことが多いです。

骨盤の構造について

理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

骨盤はいくつかの骨が靭帯や筋肉により固定され、骨同士が噛み合うようにして構成されています。

仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)、寛骨(かんこつ)の3つの骨からなります。(寛骨はさらに腸骨(ちょうこつ)、坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)の3つからなります)

特に仙骨と寛骨で「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」という関節を形成します。

仙骨は寛骨に挟まれるように、腰椎(ようつい)の下に位置し、脊柱の一番下の骨になり、バランスを整えている関節になるので仙腸関節は大切です。

仙骨の仙腸関節をつくる関節面はくぼみや溝が多く存在して関節面を構成しています。

仙腸関節はたくさんの靭帯により補強されており、「関節」とついているものの可動域はとても小さくなっています。(研究によって1°〜2°というものから可動域はないというものまで)

猫背や反り腰により痛みが生じやすい場所にもなるので、このあと紹介するストレッチ、トレーニングでケガをしにくい体を手に入れましょう!

股関節の構造について

寛骨と大腿骨(だいたいこつ)で「股関節」を形成します。

寛骨の寛骨臼(かんこつきゅう)と大腿骨の大腿骨頭(だいたいこっとう)で関節面を形成し、大腿骨頭が球状の形をしているおかげで、3軸の運動が行えます。

▼ 屈曲・伸展(股関節の曲げ伸ばし)理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

▼ 外転・内転(股関節を外に開く、内に閉じる動き)理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

▼ 外旋・内旋(股関節を内にねじる、外にねじる)理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

この3つの動きが組み合わせる事で股関節を様々な方向へ動かすことができるのです!

<参考文献>
・骨盤帯 臨床の専門的技能とリサーチの統合 原著第4版 Diane Lee著 医歯薬出版株式会社 2013年
・骨盤・股関節・鼠径部のスポーツ疾患治療の科学的基礎 福林徹,蒲田和芳編 有限会社ナップ 2013年

ボルダリングにおける骨盤、股関節のポイント

もちろん、上記の6つ全ての動きがスムーズに行えるのがベストですが、それを踏まえてさらに優先順位をつけると、

  1. 股関節屈曲
  2. 股関節外転
  3. 股関節外旋と内旋

この3つが重要になります!

1.股関節屈曲について

理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

股関節の屈曲はボルダリングにおいて、高い位置にあるフットホールドへ足を上げていく「ハイステップ」の時に重要です!

ジムで実際に「足が上がらない……」と感じる人もたくさんいらっしゃると思います。

特に座ったままでいるデスクワークが多い方だとお尻周りや股関節の前側の筋肉(腸腰筋(ちょうようきん))が固くなり、屈曲の可動域が狭くなることが多い印象です。

屈曲の可動域が狭くなると、飛ぶようにホールドを取りにいく「ランジ」の時に、しゃがむように沈み込む動きがうまく出来ず、飛んでも距離が出せない場合もあります。

ハイステップで足が上がらない、ハイステップでバランスを崩すことが多いという方は股関節の屈曲を見直すと良いかもしれません!

2.股関節外転について

股関節の外転は遠くのホールドに足を送るときに必要な動きです!

野口啓代選手や伊藤ふたば選手がよく使いますね。

股関節の外転では太ももの内側(内転筋群(ないてんきんぐん))やお尻の横(中臀筋(ちゅうでんきん))にある筋肉の柔軟性が大切になってきます。

内転筋や中臀筋が固いと体幹の安定性が減少したり、他の部位にも負担がかかります。

(内転筋、中殿筋が固くなる → 股関節の動きが制限される → 股関節の動きを膝で代償 → 膝での動きが多くなり負担が増える → 膝のケガにつながる)

また、股関節の外転がうまく行えないと体幹で代償(体を横に倒したり、ひねったりして代償してしまう)してしまう事があります。

それにより体幹の安定性が減少したり、腰への負担が大きくなったりしてしまいます。

3.股関節外旋と内旋について

理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「骨盤、股関節」編

股関節の外旋はかかとをホールドに引っ掛ける「ヒールフック」や壁に入り込む時、体重を乗せる時に使う事が多いです!

ヒールをホールドにかけて体重を乗せる時に股関節の外旋の可動域が小さくなると、膝の外側に負担がかかる事があります。

ガニ股に足を開いて壁に入り込んだり、体重を乗せたりする時に股関節の外旋の可動域が小さくなっていると股関節をうまく使えず、重心のコントロールが不十分になってしまいます。

股関節の内旋は特に強傾斜で力を発揮する「キョン」のときに重要になってきます!

キョンの時に膝を内側にいれる動きが大きすぎると、膝の靭帯に負担がかかります。

この動きを繰り返したり、キョンのまま足が滑ったりすると膝のケガに繋がります。

ヒールフックやキョンの時は膝からではなく、股関節の根本からねじるように動かすことを意識すると膝への負担が減らせます!

股関節のストレッチ&トレーニング

今回は股関節の屈曲(腸腰筋)に対するストレッチとトレーニングをご紹介します。

筋が固い場合はまずは固さをストレッチで柔らかくしてからトレーニングに入ると効果的です!

腸腰筋は体の中心に位置するため、様々な部位に影響します。うまく使えるとハイステップがやりやすくなるだけでなく、体幹が安定します!

まずは一週間続けてみましょう!

股関節前面(腸腰筋)ストレッチ

ポイント
① 右足を立てる(足を手前につきすぎないように注意)
② 左足を後ろに引く
③ 左手を伸ばしながら体を右に倒していく

登る前は動画のように動きをつけながら行い、登った後は30秒ほどかけてゆっくり伸ばしましょう!

股関節の付け根の前側が伸びている感じがあればOKです!

股関節前面(腸腰筋)トレーニング

ポイント
① 仰向けになる(腰を反らせすぎないように注意)
② 股関節の付け根から引き上げるように曲げていく
※曲げる時は腰が反らないように
※反対の足も浮かないように

股関節が固い方は重りやチューブなどは使わずにまずは自重で腸腰筋に刺激を入れていきましょう!

慣れてきたら立った状態や壁に登りながらもやってみましょう!

まとめ

今回は「骨盤、股関節のストレッチ&トレーニング」についてご紹介させていただきました。

ポイントは、

  • 股関節の動きについて理解する
  • ボルダリングでどの動きで使われるのか意識する

明日からのボルダリングに生かしてみてください!

股関節は様々な動きが組み合わさっているので一度に全て紹介することはできませんでした。

次回は、骨盤と股関節と一緒に動く「脊柱(腰椎)」について触れていきます!

また、今後も股関節については記事にしていきますのでお楽しみに!

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