SNSで見聞きすることが増えた「リセット界隈」。「ご縁があれば」と言いながらアカウントを消し、また新たに作り直す、そんな行動パターンの背景には、どんな心理が隠れているのでしょうか。意外と身近な「リセット界隈」の実態に迫ります!
リア友が突然音信不通になった。SNSでつながっていた人がいきなり垢消しをした。そんな経験はありませんか? もしも相手が何度もそんな行動を繰り返しているのなら、その人はリセット癖があるタイプなのかもしれません。まずは、「リセット界隈」とはなにかについて解説します。
「リセット界隈」とは、人間関係をリセットしがちな人、もしくはその集団を指す言葉です。
リセット界隈の人は、リアルの人間関係やSNS上での繋がりを定期的に整理し、時には完全に切り捨ててしまいがち。
具体的には、なんの前触れもなく連絡が取れなくなったり、SNSで「フォロワー整理します」「しばらくお休みします」といった投稿をしたあと、本当にアカウントを削除したりといった行動が見られます。
この、まるでそれまでの人間関係をリセットするかのような行動が、「リセット界隈」といわれる理由。リセットをするその行動パターンは、「人間関係リセット症候群」とも呼ばれています。
SNSを利用する中で、「前のアカウントは諸事情により……」「また新しく始めます」というフレーズを見かけたことはありませんか?
これは、リセット界隈の典型的な「あるある」です。一度消えてもしばらくすると新アカウントで復活する、そんないわゆる「転生」パターンが繰り返されるのも、リセット界隈の大きな特徴のひとつ。
とはいえリセット癖がある人の場合、新たに作られたアカウントも、ある程度の人間関係ができてくると再び突然リセットされることに……。
一見すると理解しがたい「リセット行動」ですが、その背景には複雑な心理メカニズムが存在しています。リセット界隈の人は、なぜせっかく築き上げた人間関係をリセットしたくなるのでしょうか。
リセット界隈の心理の根底には「繋がりたい人とだけ繋がる」という強い欲求があります。
このタイプの人は、リアルの付き合いでも、SNS上の付き合いでも、嫌いな人や苦手な人との交流に人一倍ストレスを感じます。
特にSNS上の関係では、自分の投稿に対する反応に過剰に敏感になってしまう傾向も。
「あの人、投稿にあまり反応してくれないな。わたしのこと本当は嫌いなのかも」と、つい悪い方へと考えてしまい、自己嫌悪に陥りがちです。
併せて本人を苦しめるのが、「どんなに好きな人でも関係が深まると息苦しさを感じてしまう」点。
結果として、自分自身でもなぜだか分からないまま、すべてリセットする行為を繰り返してしまいます。
過去の人間関係の中で、深く傷ついた経験を持っているのも、リセット界隈によく見られる特徴のひとつです。
信じていた人に裏切られた・保護者に十分な愛情を注がれなかった・理不尽に傷つけられた、そんな経験を持つ人は、無意識ながら「もう二度とあんな苦しい思いはしたくない」と感じます。
その思いが現在の人間関係に反映されると、その関係が幸せであればあるほどに失うことへの恐怖が強まります。
「いつこの幸せが壊れるんだろう」と、やがてくる(と本人が信じている)終わりの苦しみに耐えられず、「あんな思いをする前に自分から全部捨ててしまおう」と、衝動的にリセット行動に出てしまうのです。
程度の差こそあれ、「この人間関係をリセットしたい!」と思う瞬間は誰にでもあるものです。あなた自身にどの程度「リセット傾向」があるか、チェックリストで確認してみましょう。
□SNSのアカウントを作っては消したことが3回以上ある
□人間関係がこじれると「もうゼロから始めたい」と思う
□人に弱みを見せるのが苦手
□「フォロワー整理します」と宣言したことがある
□トラブルがあると「もう誰とも関わりたくない」と思う
□新しい環境に行くとき「今度こそうまくいく」と期待する
□自分の投稿への反応が少ないと落ち込んでしまう
□「自分を良く見せたい」という意識が強い
□楽しいとき・幸せなときもつい終わりを考えてしまう
□昔の知り合いに今の自分を知られたくないと思う
5つ以上当てはまる場合、あなたにもリセット傾向があるかもしれません。
とはいえ、リセットしたくなる気持ちそのものは決して悪いことではありません。新しい人間関係づくりを繰り返す中で、いつか自然と「この人とはずっと仲良くしていたい」と思える人ができたなら、それがベストといえるでしょう。
リセット界隈の行動は一見極端に見えますが、その根底には人間関係にまつわる強い不安や恐怖があります。
また、SNSの発達により「いつでもつながっていられる」現代だからこそ、逆に「つながりすぎる」ことの息苦しさを感じている人も少なくありません。
リセット行動は、そうした息苦しさから自分を守るための防御メカニズムのひとつ。お互いに理解し合おうとする気持ちを忘れず、心地よい人間関係を育んでいけるとよいですね。
Written by やまだうめ