井の中の蛙、大海を知らずという言葉があります。
自分の普段の生活の中の、小さなコミューンの中でいくら名声があったり信頼されていようとも、それを鼻にかけていると自分よりも遥かにスペックの高い誰かに遭遇したとき、その鼻っ柱を折られる可能性って、決して皆無ではありませんよね。
たとえば学生時代に、クラスのマドンナ扱いされていた女の子がいたとします。これに対して本人がある程度謙遜していれば悲劇は起きないものの、いざ社会に出てみると、自分よりも数段美人な女性がそこら中にいて、勝手に自尊心が傷つくなんてこともあるようですね。
特にモテという要素って、うぬぼれが自爆を招きやすいもの。
今回は、自分を小さな環境の中でモテ度ランク上位であると認識していたものの、実際は大してモテ要素を持っていなかった人々の話を紹介したいと思います。
学生の男女比がどちらかにかなり偏っている高校って、しばしば見かけますよね。最近は若者の数も減っているので、元女子校・元男子校が男女共学に舵を切り替えるということが、全国的に珍しくないところです。
筆者の知人のGさんという女性は、高校時代に工業科に入学しました。このとき、クラスには自分以外の女子はいなかったそうです。当然そんな環境ですから、男子からの熱い視線を感じない日はなかったそうです。もうモテモテ。
信じられないぐらいにモテてモテてしょうがないと。そういう状態だったわけですが、実質的にライバルがいないため、モテ度ランクで言えば不動の1位以外にあり得ない状態でした。
ただ、このGさんは高校時代に散々男子から注目され続けていたために、当たり前の平衡感覚が徐々に薄れていき、やがては「私は物凄くモテる」と感じるようになっていきます。いわゆる錯覚です。
この錯覚から目覚めたのは、大学生になってほどなくした頃。自分よりもビジュアル的に目を引く女子がやけに多いことに気付いた頃、「あ、私って別にそこまでモテるわけじゃないんだ」と気が付いたのだとか。
この大学での彼女のモテ度ランクは、せいぜい中間程度だったそうです。
これは、数年前まで某オタク系社会人サークルに所属していたHさんという女性の話です。オタサーの姫という言葉がありますが、オタク系のサークルもやっぱり男性がほとんどを占めています(ジャンルにもよりますが)。
Hさんはそんなサークルに入って活動をすることになったのですが、そうなると男性メンバーたちが一斉に彼女に気遣いを見せたり、プレゼントをしたり、何かと他のライバルを出し抜こうとする様子を見せるようになったそうです。
彼女はその光景を見て、なんともいえない恍惚(こうこつ)を味わったそうですが、いかんせんオタクたちの中にはルックス的に秀でた人物もいなかったため、みんなに良い顔をして女王のように君臨するだけでした。
ところが件(くだん)のサークルに、もう一人の女性メンバーが加わると話は変わってきます。今までHさんをちやほやしていた面々が、新しく入った女性になびくようになったのです。何故ならこの新メンバー、Hさんよりも一回り若く、そして可愛かったのです。
男性ってオタクであってもかなり現金な生き物。こうしてHさんはこれまでのモテ度ランク1位の王座を蹴落とされ、失意のうちにサークルを脱退。そして現実に戻ってみると、ただの平凡な女性でしかないことを改めて認識したのでした。
モテ度ランクというものは、人間どうしたってある程度意識してしまうものです。人間はやっぱり、競争が好きだろうと嫌いだろうと、頭の中から捨て去ることはできませんからね。
ですが、これを意識することって自分の立ち位置を俯瞰(ふかん)で眺めるためには重要です。客観だけが、自分で自分のことを正当に評価できる唯一の手段ですからね。
その上で大事なのは、決して慢心しないことでしょう。一旦小さな世界でうぬぼれてしまうと、後が大変です……。
Written by 松本 ミゾレ