こんにちは、yuzukaです。
現役風俗嬢でありながら、美容外科、精神科の元看護師という肩書きを持つ私が、「美容整形と幸せ」について語るこちらの連載。第6回は、質問の多い「美容外科で働くということ」についてをお話したいと思います。
実は私のもとに寄せられる美容整形系の質問の中で最も多いのは、二重術の方法でも、豊胸手術のアレコレでもなく、「美容外科で働きたいのですが…」という内容のものだったりします。今回は美容外科で働く方法やメリット、デメリットの解説を、看護師の目線でお届けします。
美容外科の求人を見ていると、「臨床経験3年以上」と明記されている場合がほとんどなのではないでしょうか?美容外科って、日勤のみ勤務の割りには高給取りなイメージで、そのうえ華やかな雰囲気があるので、「そもそも病院なんかでは経験をつまず、新卒で美容外科で働きたい」なんて相談が、後を絶ちません。
実は新卒を雇ってくれるクリニックが、ないわけではないんです。だけどそもそも何故、美容外科には「臨床経験」が求められるのか、考えたことがありますか?
クリニックには、「必ず暇な時間」って、ありません。病棟に実習に行った経験がある方ならわかると思いますが、病院って「だいたいいつも手が空く時間」ってのが、あるんですよね。そのうえ職員の人数も多く確保しているところが殆どですから、新人を教える「人手」と「時間」を確保してから新人を雇うってのが、ほとんどです。
だけどクリニックは、そうはいきません。将来動ける人材を育てたいというよりは、「今」使える人材を欲しがっています。少ない人数をそれぞれ有効に稼働させなくてはいけませんから、新人に付きっ切りで教育なんて、よほど大きなクリニックでしか、ありえません。私の勤めていたクリニックは教育制度が充実していましたが、それでも「ちょっと点滴打ってきて」「ちょっと回復状況見てきて」なんていう、看護師として当たり前の「視点」や「技術」が、その日のうちから求められました。
小さいクリニックなんかは、これがもっと著名です。採用側がほしいのは、「ただの人」ではなく、「看護師」なんですよね。
それも「点滴や注射」は、恐らくどの分野よりも「洗練された技術」が求められます。ビタミン点滴や、静脈麻酔時のルート確保。迅速な対応が求められる上に、「患者層」を考えれば、打てれば良いってもんじゃない。失敗なんて、絶対に許される雰囲気ではありません。白くて細い腕に、注射の失敗で内出血を作るなんて、想像しただけで背筋が凍りそうです。芸能人やモデルが来院される機会も多いですが、そういう方を相手にする時は、尚更です。
一般科での臨床経験なんて、美容とは関係がないから…。と思ってしまいがちですが、看護は全ての分野同士が、繋がっています。「一般科」で身につけるスキルや看護師の勘って、どこに行ったって、生きるんです。点滴の刺入部を見て、モニターを見て、患者さんの術部や顔色を見て。「あれ?おかしいな」と思える感覚。あれも、最初からあるわけではなく「経験」から身につくもの。
新卒って、厳密にはまだ「看護師」ではないんですよね。プロの目を持っていない。卒業して、少しづつ「看護師」になっていく。新卒でいきなりクリニックに就職して、「看護師としての目」を当たり前に求められるって、とても怖いことだと、私は思います。ただでさえバタバタしている日常の中で、点滴もまともにできない新人が入ってきたら…。「そんなこともできないの?」って目で見られるのは、間違いありません。
自分のためにも、患者さんのためにも。病棟で「看護師」になってから。「看護師としての目」を身につけてから。美容外科への転職を考えるのが、ベストではないでしょうか。
美容外科で働く時にひとつ、リスクとして知っておいて欲しいデメリットがあります。それは、「美容外科での勤務歴がいくら長くても、看護師としてのキャリアにはならない」ということです。働いていた当初、先輩から、美容外科は看護師の「墓場」だと言われました。長く働けば働くほど、他の科への転職もしづらくなります。
美容外科って、良い意味でも悪い意味での「独自の世界」ですので、そこで身につけた技術って、他の科ではあまり役に立たないんですよね。だから看護師として働いていたのに「ブランク」のように扱われやすいんです。実際美容外科を辞めていく先輩看護師は、口を揃えてこう言います。「こんなのは看護師の仕事じゃない。私は看護師をしたい」医療行為を行うのですから、看護師であることには間違いないのですが、どちらかというと「医療行為」というよりは「サービス」として。「患者様」ではなく「お客様」相手に対応をする場面
多いので、そのような考えに至るのかもしれません。
また、そういう思いで転職しても、未だに頭がカタイ看護師ばかりのところで再就職しようものなら、「美容外科で働いていた」というだけで、整形を疑われてあらぬ噂をたてられたり、異色の目で見られたりもします。「美容外科の歴史」でも書きましたが、未だにそういう「差別」から抜け出せていない現実というのは、働いている側でさえも実感します。
では、美容外科で働くのはデメリットだらけかというと、そうではありません。メリット側の話をしましょう。
何よりも気になるのは「美容外科働けば、無料で整形できるの?」というところではないかと思います。これは、あながち間違いではありません。ただ「完全無料」なのは、皮膚科関係くらいでしょうか。皮膚科の機械は新人同士で練習しあったりするので、どこのクリニックでも、受けられる機会があると思います。また、それ以外のほとんどの施術も「職員割引」を使って破格で受けられることがほとんどですし、「ダウンタイム休暇」も、堂々と取ることができます。これは「綺麗になることも仕事のうち」だという考え方から来ていて、クリニックによっては「美容代」が支給されるところもあるくらいでした。
「あれ?顔いじったー?」なんてラフに言い合える環境で、美容整形に偏見がない人しかいませんから、「整形して綺麗になりたい」という人にとっては、理想的な環境です。
因みに他の「医療機関」と違い、露骨に見た目が求められる場合も多く、そもそも「美人」しか採用されない場所もありますし、そうでなくても「肌の綺麗さ」や「体型の維持」は、当たり前に要求されます。皆さん、化粧品カウンターにタッチアップに行った時、スタッフの方が「汚肌」で、途端にそのブランド製品への信頼が落ちてしまったなんて経験ありませんか?美容外科は「綺麗」を売り物にするわけですから、同じようなことが求められます。清潔感や身なりは、他の医療機関よりも格段に求められると考えた方が良さそうです。私の勤めていたクリニックでいえば、太ればクビだと口すっぱく言われましたし、ニキビを作って行けば、理由を尋ねられたうえで「美意識が足りない」と説教をくらいました。
これは一見「デメリット」ですが、看護師として働いていると、どうしても美容云々よりも機能性を重視し、所謂「女を捨てる」状況になってしまいがちです。それが、美容外科で働いている間は常に「美意識」を高める環境で「美意識の高い」人達に囲まれて仕事ができるわけですから、おのずと綺麗になれる環境だということです。これって、立派なメリットではないでしょか。
さて、日勤のみで華やかで、どこか楽そうな美容外科ですが、実はそんなに楽じゃありません。クリニックに就職した途端に大量に課される暗記。オペ記号、施術の手順…。ネットでなんでも調べられるこの時代。訪れる患者様はみんな「美容マニア」です。求められるのは、オペの技術や知識だけではありません。最新で専門性の高い「美容の知識」を、常にストックしておかなくてはなりません。日々勉強と情報の更新が必要なのは、看護師であればどの分野でも同じですね。
「楽そうだから」で就職すると、地獄を見ます。メリットやデメリットを考慮したうえで、本当にキツくても、努力をしてでもやりたい分野なのか。しっかり考える必要がありそうです。
Written by yuzuka