言葉づかいには、その人がこれまで積み重ねてきた知識や経験が表れます。教養がある人と話していて心地よいのは、話す内容だけでなく、あえて口にしない言葉があるからです。今回は、教養がある人ほど言わない言葉と、知性を感じる言葉づかいに近づくためにできることを紹介します。
教養がある人は、相手が知らないことに出会っても「そんなことも知らないの?」とは言いません。知識の量は、育った環境や仕事、興味の向き方によって人それぞれだとわかっているからです。
この言葉は、言った側に悪気がなくても、相手に恥ずかしい思いをさせてしまいます。教養がある人は「実はね」とさりげなく補足し、相手が気まずくならないように話を続けるものです。
教養がある人ほど、相手が話している最中に「あ、それ知ってる」と口をはさむことはありません。たとえ知っている話題でも、相手がどんな視点で話そうとしているのかに関心を向けます。
以前、私が読んだばかりの本の話をしていたとき、相手の方がすでに読んでいたことがありました。それでも最後まで話を聞いたうえで「私はあの場面が印象に残りました」と返してくれ、知識をひけらかさない落ち着きに感心したのを覚えています。知っていることを示すより、会話を広げることを大切にしているのでしょう。
教養がある人の言葉づかいで目立つのは、人をひとことで決めつけない点です。「どうせ、ああいう人だから」「あの人はいつもそう」といった言い方は、相手のほんの一面だけを見て判断してしまう言葉と言えます。
本や人との出会いを通して、物事には多くの側面があると知っているため、評価を急ぎません。気になることがあっても、「何か事情があったのかもしれない」と、いったん保留にする余裕を持っています。
「最近の若い人は」「今どきの子は」も、教養がある人があまり使わない言葉です。年齢や世代で人をひとくくりにすると、目の前の相手を見ていないように聞こえてしまいます。
歴史を少しでも知っていれば、いつの時代も年長者が若い世代を心配してきたことに気づくはずです。教養がある人は、世代の違いを批判ではなく、価値観の違いとして受け止めています。
教養がある人は、映画や料理の感想を「やばい」「すごい」のひとことで終わらせない傾向があります。言葉が悪いわけではありませんが、それだけでは何に心を動かされたのかが相手に伝わりません。
「最後のシーンの音楽がよかった」「出汁の香りがやさしい」のように、心に残った部分を自分の言葉で表現します。感じたことを具体的に話せることも、知性を感じさせる要素のひとつです。
知性を感じる人は、知らないことを知らないと言える人でもあります。わからない話題が出たら、知ったふりをせず「それ、初めて聞きました。教えてください」と聞いてみてください。
相手は自分の得意な話を聞いてもらえるので、会話が自然と弾みます。新しい知識も増え、次の会話の引き出しにもなるはずです。
誰かについて話すときは、「あの人は〜な人」と性格を決めつけるのではなく、「今日は会議に遅れてきた」のように、実際に見た出来事だけを話すよう意識してみましょう。
事実と自分の解釈を分けて話す習慣がつくと、言葉に落ち着きが生まれます。聞いている側も、安心して話を受け止められます。
「すごい」「よかった」と言いたくなったら、そのあとに「どこが」をひと言加えてみてください。「この服、色合いが秋らしくて素敵」のように、ほんの短い言葉で十分です。
最初は言葉がすぐに出てこなくても、続けるうちに物事を細かく見るくせがついていきます。本や新聞を読んで、気に入った表現を書き留めておくのもおすすめです。
年下の人との価値観の違いを感じたときは、「最近の若い人は」ではなく、「私たちの頃はこうだったな」と、自分の経験として話してみましょう。
相手を評価する言い方から、思い出を共有する言い方に変わるだけで、会話の雰囲気はやわらかくなります。「今はどうなの?」と質問を添えれば、世代を超えた会話のきっかけにもなります。
教養がある人が避けている言葉は、相手の知識を笑う、話の途中で口をはさむ、人や世代を決めつけるなど、相手への配慮が欠けて聞こえてしまうものばかりです。反対に、知らないことを素直に聞き、感じたことを具体的に伝える姿勢は、年齢を重ねるほど魅力として表れます。
まずは、今日の会話でひとつだけ、言いかけた言葉を選び直してみてください。小さな積み重ねが、知性を感じさせる話し方につながっていきます。
Written by 有紗