精神的なDV、つまり配偶者や恋人などに精神的暴力をふるう男子の特徴や心の中と対処法について、本項では見ていきます。
彼氏が彼女に加える精神的DVとは、たとえば「彼女が彼に話をしようとしても無視する」「なんでも彼女のせいにして彼はいつも正しいと思っている」「彼が急にキレて、あとになって妙に彼女の同情を引くようなことを言ってくる」などです。
このような男は、出会った当初は非常に魅力のあるいい人に見えることが多いようで、付き合ったのちに彼女が「精神的DVをふるう男だとは思っていなかった」と泣くケースが多いそうです。
これは取材をしていても感じます。精神的DVを加える彼から、命からがら逃げてきた女子に話を聞くと、「出会った当初、彼はすごく優しくてマメで、わたしが言うことはなんでも聞いてくれて……。」というところから話が始まるのです。
出会った当初、彼はなぜ優しくてマメだったのか?
もっとも簡単な答えは「したかったから」です。なぜしたかったのか? 彼はすごくスケベな男だからか?
もちろん男女ともに、若くて健康であれば「したい」と思うワケですから、彼はスケベです。でもそれだけではなく「淋しいから」という理由もあります。
精神的DVを加える男は、常に淋しい生き物です。淋しさって、生きている以上全員がそれなりに抱えている感情ですが、精神的DVを加える男は、なにがそんなに淋しいのか?
たとえば、頑張っても頑張っても仕事がうまくいかない、つまり自分が社会から必要とされていないのではないか? と思っている。あるいは、そもそも自分の適職がわからない。わかったところで、どういう努力をすればその仕事に就けるのかがわからない。
どういう努力をすればその仕事に就けるのかわからない仕事って、この世にいくつもあります。
たとえば脚本家・作家・女優の大石静さんは、若い頃、女優になりたくてなりたくてしかたなかったと言います。しかし、どうすれば女優になれるのかわからない。しかも同世代の女優志望者はどんどんテレビや舞台に出て出世していく。そんなこんなで彼女は、旦那さんに対してかなり精神的DVを加えてしまっていたと、彼女のエッセイに書いてあります。
大石さんの場合は、旦那さんが非常に懐が深い人だったようで、夜ごと荒れ狂う大石さんのことを温かく見守ってくれていたそうです。
さて、彼から精神的DVを加えられているあなたはどうするべきか? それでも彼のことが好きなのであれば、「毒を食らわば皿まで」です。つまり、社会にうまく馴染めない男を好きになってしまったのであれば、最後までとことん彼と付き合う覚悟を持つ、ということです。
そこまで彼のことが好きではないのであれば、今すぐ別れたほうがいいでしょう。どっちつかずの状態で、つまり精神的DVを受ける覚悟なくダラダラと彼と一緒にいたら、女性の場合は拒食症など、体に変調をきたすこともあるからです。拒食症は主に女性に多い症状です。
精神的DVといえば、常に加害者は男、被害者は女性と相場が決まっていますが、上に大石さんの例をご紹介したように、女性が加害者となるケースもあります。男女とも、自分と社会との折り合いがうまくつかないゆえ、身近な人に八つ当たりするのです。
あるテレビ局に勤務していた女性がなかなか興味深いことを言いました。「テレビに出ている超かわいいアナウンサーが、休憩室で彼氏に電話してて、『お前さ、ちゃんとご飯つくってんだろうな? は? 誰に向かってそんなこと言ってるわけ? お前、死ねよ』」と言っていたとか。
この超かわいいアナウンサーもきっと、世間の評価とは裏腹に、社会と自分との折り合いをうまくつけられていないのかもしれません。あるいは単純にお嬢育ちで、人の心というものをまったく理解していないのかもしれません。お嬢育ちとは、自分が女王でいられる社会のことは誰よりも理解していても、それ以外の社会のことはさっぱり理解していないということだから。
自分と社会との折り合いをうまくつけることができない人に対して、わたしたちができることはなにか? できることがあるとすれば、それはどの範囲までのことか? 考えてみる価値はあると思います。考えても答えが出なければ別れてしまえばいいだけのことです。が、それは、社会に猛獣を放つことになるかもしれません。むずかしい問題です。
Written by ひとみしょう