最近、熟年夫婦で卒婚する方が増えています。新しい夫婦の形として気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では卒婚のメリット・デメリットと卒婚する前に決めておくべきことをご紹介します。卒婚に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
1. 卒婚とは
卒婚とは戸籍上の婚姻関係は維持したまま、各々の新しい道に進んでいく生活形態のことです。教育ジャーナリストの杉山由美子氏が2004年に執筆した「卒婚のススメ」から、卒婚の言葉が誕生しました。
離婚は戸籍が別になりますが、卒婚では戸籍上の婚姻関係は変わりません。婚姻は続いていますが、夫婦の話し合いの元、生活を別にします。お互いの自由を認め、個々の人生を歩む新しい夫婦の形です。
定年の節目を迎えた夫婦や、子育てが一旦落ち着いた夫婦が卒婚を選ぶことが多く、世間体や子どもに迷惑をかけたくない夫婦に適した方法になります。
2. 卒婚で実感するメリット9選
新しい夫婦の形として注目されている卒婚ですが、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、卒婚を選んだ場合に実感するメリットを9つ紹介していきます。
1:離婚ではないので世間体が保てる
卒婚は戸籍上は婚姻関係が続いているため、離婚とは異なります。お互いに配偶者がいるままの状態のため、世間体を保てるのがメリットです。
書類の手続等で配偶者の欄を空ける必要もありませんし、周囲から家庭について質問されても「元気にしているよ」など近況を答えられます。親族の集まりには夫婦そろって参加すると約束していれば、一緒に参加することもできます。
2:お互いに干渉し合う必要がない
卒婚するとお互い自由に生活できるため、干渉し合う必要がなくなります。
生活スタイルは別になるので、友人と旅行や飲みに出かけるものよし、家で思う存分だらだらするのもよしです。お互いに生活を合わせる必要がなく、思うままに羽をのばせることでしょう。
同時に卒婚しても婚姻関係は継続しているので、家族のイベントは今までと変わらず夫婦として楽しむこともできます。
3:ぎくしゃくすることがなくなる
距離をとることで、ぎくしゃくすることがなくなるメリットもあります。
毎日一緒にいると、どうしても相手の嫌なところに目が行きがちでしょう。しかし、卒婚すると相手の行動やしぐさが以前より気にならなくなり、夫婦仲が結婚生活時よりも良くなることがあります。
熟年離婚を避けるために、あえて卒婚するのもありといえるでしょう。
4:様々な居住スタイルが選択できる
同居するか別居するかも夫婦で好きに決められるので、様々な居住スタイルが選択できます。
離婚であれば、世間体も本人の気持ち的にも同居のままとはいかないでしょう。しかし、卒婚は夫婦の意思のみで成り立っているので、自分たちに適した居住スタイルを選べます。
居住スタイルに決まりはありませんが、大きく分けて3つのタイプがあります。
1つめは、家庭内卒婚です。同居は続けながらも生活は別にし、お互いの生活には干渉しないスタイルです。
2つめは、週末卒婚です。いきなり別居するのは経済面やメンタル面でもなかなかハードルが高いものです。そこで、夫婦のどちらかがホテル等に週末のみ宿泊し、平日は一緒に過ごします。週末だけでも別々に暮らすことで自由を楽しめ、気分転換ができるでしょう。
3つめは、別居卒婚です。離婚のように完全に別に暮らしたい場合は、別居卒婚スタイルがおすすめです。
住まいが完全に別になるので、顔を合わせる頻度も少なくなります。心の中では離婚をしたいと思っているが、世間体が気になるという方は別居卒婚が向いているのではないでしょうか。
別居という形でなくとも自由を満喫できるのが、卒婚の魅力の1つです。
5:相続関係でのトラブルが少ない
婚姻関係は維持されているので、相続関係でのトラブルが少なくなります。
離婚とは違い、卒婚であれば夫の財産は妻が相続できます。卒婚という形を夫婦で選択しても、法定の相続関係に影響はでません。夫の財産の相続権は今まで同様、妻にあります。
卒婚を考える夫婦は、熟年夫婦が多いです。長年夫を支えてきた妻であれば、夫の財産は相続したいものでしょう。
卒婚であれば、夫の財産は妻が正当に相続できるので、相続で揉めることは少ないです。
6:届出や手続きが必要ない
卒婚は夫婦当事者間での取り決めなので、届け出や手続きが必要ありません。
離婚であれば離婚届を提出し、煩雑な手続きが必要となり、精神的にもつらいと感じる方も多いです。しかし、卒婚は離婚と違い、婚姻関係は変わっていないので、手続きが必要ありません。面倒な手続きがないだけでなく、精神面でも卒婚のほうが負担が少なくなります。
7:入籍したままで構わない
離婚とは違い、卒婚は入籍したままで構いません。
卒婚は夫婦間での決めごとです。たとえ卒婚し別居したとしても、婚姻関係は継続したままで何も変わりません。入籍したままでよいので、周囲にも体裁を保てます。
8:元の結婚生活にも戻れる
卒婚したとしても、いつでも元の結婚生活に戻れます。
毎日一緒にいたときは分からなくとも、離れてみると相方の有難さを感じることがあるでしょう。そのような場合にも、卒婚は離婚ではないので話し合って元の生活に戻れます。
本当に離婚しても良いのか迷いがある方は、卒婚し一旦離れてみるのもおすすめです。
9:両親や子供に心配をかけない
いくつになっても離婚は、両親や子供が傷つくものです。離婚をするタイミングによっては両親も年老いており、心配してしまうかもしれません。何より離婚をしてしまうと、子供は心にダメージを少なからずおってしまいます。
卒婚であれは婚姻関係が維持されるため、両親や子供に心配をかけないでしょう。
3. 卒婚で実感するデメリット4選
卒婚で実感するデメリットとして「結局離婚に至ることも少なくない」「周囲には理解されないことが多い」「生活費が余分にかかる」「何となく中途半端に感じる」などが挙げられます。
必ずしもメリットばかりではありません。デメリットも知ったうえで卒婚をするようにしましょう。それでは卒婚のデメリットについて詳しく説明していきます。
1:結局離婚に至ることも少なくない
別居や生活スタイルを別にして暮らしていると、離婚する可能性もあります。
長期間離れているとお互い必要なのかどうか分からなくなりますし、夫も妻に遺産を残すべきなのか考えることもあります。
このように長期間の別居をすることで夫婦であることに疑問を感じやすくなるため、どうしても卒婚から離婚につながることもあるので気を付ける必要があるでしょう。
2:周囲には理解されないことが多い
最近では芸能人が卒婚したと発表することも増えましたが、まだまだ卒婚している夫婦は少ないです。
そのため、周囲にはなかなか理解してもらえない可能性があります。親族にも卒婚することを説明する必要があるのか、周りに卒婚したと発表してよいのかなど、卒婚した場合に取るべき行動が分からなくなってしまうこともあるでしょう。
周りに夫婦仲を詮索されても平気であれば問題はありません。
3:生活費が余分にかかる
暮らしていくには当然お金が必要になりますので、卒婚すると生活費が余分にかかってしまいます。
たとえ同居しながら卒婚したとしても、食事を購入したり掃除を外注したりとお金は必要になってきます。別居卒婚であれば、家賃も当然必要ですので多額の資金が必要になるでしょう。
十分な生活費が用意できないのであれば、卒婚をすべきか慎重に検討するべきです。
4:何となく中途半端に感じる
卒婚はどっちつかずで、何となく中途半端に感じることもあるでしょう。
状態としては、離婚はしておらず、生活は別だけども婚姻関係は継続されています。卒婚は何ともいえない状態ですので、白黒はっきりさせたい性格の方にはモヤモヤとした気持ちが続いてしまうことも知っておきましょう。
4. 卒婚する前に決めておきたいこと5選
卒婚は手続きも必要なく、ハッキリとしたルールもありませんので、事前に話し合いが必須になります。
事前に決めごとを作ることで、卒婚後の生活をより楽しめるでしょう。ここからは、卒婚する前に夫婦で決めておきたいことを5つ紹介します。
1:卒婚後の恋愛をどうとらえるのか
卒婚中に恋愛すると不倫となってしまう可能性もあるので、恋愛をどのようにとらえるのか話し合いましょう。
卒婚をなかなか受け入れない夫には、卒婚するのであればお互い恋愛は自由にしても良いと約束すると承諾してくれる可能性が高くなります。夫に対して好きという感情が残ってないのであれば、恋愛は自由にすると明言するのもおすすめです。
2:病気になった時のルール作り
病気やケガになった時のルール作りをしておきましょう。
離婚であれば縁が切れるので、相手が病気やケガを入院したとしても関係ありません。しかし、卒婚は婚姻関係が継続しているので、全く関与しないというわけにはいかないでしょう。
病気やケガで介護が必要となったとき、離婚と同じように関与しないのか、それとも夫婦として元通りになるのか、夫婦で話し合いをしておきましょう。
実際に病気になってからでは遅いので、卒婚をする元気なうちに話し合っておくのが得策といえるでしょう。
3:家族や親戚の同意を得る
事前に家族や親戚の同意を得ておきましょう。
いくら離婚とは違うといっても、生活は別々になるので、何も伝えずに卒婚してしまうと周りも心配してしまいます。また、子供の理解を得ず勝手に卒婚してしまうと、親子関係に亀裂が生じる可能性もあります。
夫婦で勝手に物事を進めるのではなく、家族の問題としてなぜ卒婚しようと思うのかしっかりと説明しておきましょう。
4:新居をどうするのか
家庭内卒婚であれば新居は必要ありませんが、別居卒婚の場合は新居をどうするのか考えておきましょう。
今後どのくらいの頻度で会うのか決めておくと、家の場所も決めやすくなります。例えば、月に1回は顔を合わせるのであれば、近所に住むほうが便利でしょう。反対に今後関係を断絶するのであれば、遠くに住んでも問題はないといえます。
卒婚までに新居を探し、生活に必要な家電・家具等を揃えておくとスムーズに別居卒婚を進められるでしょう。
5:生活費の分担をどうするのか
今後の生活費はどうするのか各家庭で話し合いましょう。
一般的に、夫から卒婚したいと言われた場合には生活費が貰える可能性が高くなるでしょう。しかし、十分な生活費を貰える可能性は高くないと言えます。
自分の働き先が確保できるのか、また貯金はどのくらいあるのか確認し、ゆとりのある生活ができるよう準備を進めます。家庭内別居であれば、家事をするかわりに夫から生活費を貰う方法も1つの方法です。
5. 卒婚のメリット・デメリットを把握して新たな夫婦関係を検討してみましょう
正式に籍を抜く離婚とは違い、卒婚であれば簡単に自由を満喫できそうで良いものに聞こえるかもしれません。
しかし、何事もそうですが卒婚もメリットばかりではありません。卒婚のメリット・デメリットを把握して、新たな夫婦関係を模索してみましょう。