今回は、以下のお悩みにお答えしたいと思います。
<自分は信頼を置いている人への依存心が強く、恋人からの愛情を感じてはいるものの、会えない日が続くと強い淋しさに支配されて心の整理ができません。また、相手のことを思うと自分の気持ちを上手く伝えられないため、その度に我慢してしまうのもとてもしんどいです。>(女性/29歳)
1. その淋しさの原因は「葛藤する自分に葛藤しているから」
この場合の淋しさとは、端的に、葛藤のことだと、キルケゴールという哲学者は言います。ここでいう葛藤とは、具体的には以下のようなことです。
あなたがひとりでいるときに、たとえば彼にLINEして「会いたい」「淋しい」と言いたいと、あなたは思いますね。でも言えないですね。
このとき、じつは、あなたの中にふたりの自分がいます。彼にLINEしたい、でもできない、と葛藤する自分と、そうやって葛藤する自分に葛藤するもうひとりの自分です。
LINEしたい、でもできない、というだけの葛藤なら、話はいずれ終わるのです。AかBかの二択だから。彼にLINEするかしないかのいずれかを選ぶと、話はおしまいですよね?
でも、わたしたち人間は、そうやって葛藤する自分を、もうひとりの自分が見てしまうのです。そして、そのもうひとりの自分が葛藤するのです。こんなことで葛藤する自分が嫌だ、性格を変えたい、他人に依存しない人間になりたい、などと。
その葛藤が、<相手のことを思うと自分の気持ちを上手く伝えられないため、その度に我慢してしまうのもとてもしんどい> というしんどさをあなたの胸に運んでくるのです。
ということは、「葛藤する自分に葛藤するもうひとりの自分」をどう手懐けるのか、という問いに答えを出すことが、淋しさから解放されることにつながるということです。
ではどうすれば「葛藤する自分を見る、もうひとりの自分」を手なずけることができるのでしょうか。
2. 漠然とした淋しさを消す方法
葛藤する自分も、それを見て葛藤する自分も、ともに絶えず動いていますね? 彼にLINEして「会いたい・淋しい」と言いたい気持ちと、そうできないと思う気持ちは、絶えず動いていますね。当然、そういう自分に葛藤する気持ちも、絶えず揺らいでいますね。
LINEする? したら淋しさが薄れるはず、でもできない…… でもLINEしたい…… ああ、今日はもういいや、とりあえず寝よ。で、翌朝、やっぱり彼にLINEしたい、と思って、実際にLINEになんらかの文章を打ち込んで、送信ボタンを…… やっぱ押せないや…… と、また葛藤するでしょう? そうやって葛藤の度合いが上がったり下がったりする自分に対する葛藤も、大きくなったり小さくなったりするでしょ?
だから、「なんとなく淋しい」と感じている人は、つねに情緒不安定で、ゆえに他者に依存しやすく、あげくの果てに、他人から「ちょっと病んでいる子」と呼ばれたりするでしょう?
病んでいようといなかろうと、どちらでもいいんです。話のポイントはあくまでも「葛藤とは、今この瞬間に揺れ動いている気持ちのことだ」ということです。
今この瞬間に揺れ動いている気持ち。これはじつは簡単に消すことができます。それは、究極的には「わたしはこう生きる」という、自分の生き様に対する自信のようなものが萌芽した時点で消えてなくなってくれるのです。
3. 恋愛は恋愛という行為だけで成り立っているわけでは決してない、ということです
ここでのポイントは「生き様」なんですね。恋愛って、恋愛という行為単体で存在しているものではなく、その人の生き様がそのベースにあります。
たとえば、彼氏と会えなくてもそれほど淋しさを感じない人というのは、(表向きそうは見えなくても)わたしはこう生きる、わたしはこういう仕事をする使命を与えられている、という筋のとおった気持ちを持っている人です。
反対に、彼氏と会えないと漠然と淋しくて、毎日がパッとしない人というのは、「わたしはこう生きる」という芯のある気持ちを持てていない人なのです。
なのであなたはきっと、彼氏との関係のみならず、仕事における人間関係も、家族との関係も、自分との関係も、自分と世間との関係も、どれもうまくいっていないはずです。
誰と一緒にいても、どこでなにをしていても、「漠然と淋しい」。そうですよね? その淋しさは、「自分はこう生きたい・こう生きる」という気持ちが芽生えると、一発で消えてなくなってくれます。
4. 「感じる」を大事にすること
ではどうすれば「わたしはこう生きたい・こう生きる」という気持ちを持つことができるのでしょうか。
答えは「感じる」ことを大事にすること、です。感じるというのは、たとえば、空を見て美しいと「感じる」とか。美味しいものを食べて美味しいと「感じる」とか。友だちと一緒にいるときに楽しいと「感じる」とか。
そう! 彼氏と会えないときに淋しさを大量に抱えてしまう人には、感じる「外部」がないんですよ。
すべて「自分」なんです。自分というごく限られた世界の外には、たとえばどこまでも青く美しい空があります。地球の恵みみたいな、とても新鮮なお魚や野菜があります。あなたに驚きを与えてくれる、友だちというかけがえのない他者がいます。
そういうのをまるっと度外視して「自分」の世界にこもるところから、大量の「なんとなく淋しい」気持ちは生まれます。
どうか「外」の世界を「感じて」ください。「考える(悩む)」ではなく、外に出て、五感を使って太陽の輝きやにおいを「感じて」ください。
そうするうちに、やがて「わたしはこう生きたい・こういうことをしたい」という「思い」が生まれるから。そしたら、気がつけば、ひとりでいても淋しくない「強い」あなたがそこにいるから。
※参考 『自分を愛する方法』ひとみしょう(玄文社)2020(8月上旬全国発売予定)