理学療法士が教えるボルダリングのための自宅トレーニング「肩、肩甲骨」編

ボルダリングが上手くなりたい! という方のために、理学療法士/コンディショニングトレーナーの佐々木優太が自宅でできるトレーニングをご紹介します。

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今回のトレーニングテーマは「肩、肩甲骨」です。

肩や肩甲骨は腕を使って登るボルダリングに重要な関節にも関わらず、意外と鍛えている人は少ないパーツなんです。

自宅でも鍛えやすいパーツなので、今回は自宅でできるトレーニングのポイントをお伝えします!

「肩、肩甲骨」のトレーニングでライバルと差を付けましょう!

ボルダリングにおける「肩、肩甲骨」の役割

ボルダリングにおいて、「肩、肩甲骨」の役割は大きく3つ。

①「肩、肩甲骨」の「可動域の確保」と「安定性」
②「肩、肩甲骨」と脊柱の連動について
③ホールドを掴んだときの「肩、肩甲骨」の動きについて

詳しい説明に入る前に、もう少し「肩、肩甲骨」について説明します

「肩は『肩関節複合体』という5つの関節の集まり」

「肩」と一言に言っても実は関節は1つではありません。複数の関節が動くことで「肩」が動きます。

肩には5つの関節があり、「肩関節複合体」と呼びます。色々あって難しいですが、大切なことは複数の関節の動きが組み合わさり、肩の動きに関わっているということです。それぞれ説明していきます。

ボルダリングのための自宅トレーニング「肩、肩甲骨」編

①肩甲上腕関節

一般的な肩関節。皆さんがイメージしている肩関節はこちらになります。肩甲骨と上腕骨による関節になります。

②第2肩関節

正確には関節ではありません。三角筋と関節筋腱板(インナーマッスル)の間。この間で筋と筋、その他の組織と滑るような動きが起こります。この動きを促す滑液包と呼ばれる袋状の組織があり、痛めやすいポイントになります。

③肩甲胸郭関節

肩甲骨と胸郭による関節。肩甲胸郭関節も直接連結しているわけではなく、胸郭の上に浮いているような状態になります。不安定なため、筋による安定性が必要。

④肩鎖関節

肩甲骨(烏口突起)と鎖骨を結ぶ間接。肩の前側にある関節になります。

⑤胸鎖関節

鎖骨と胸骨による間接。唯一肩と体幹を結ぶ関節。

肩の動き方について

「肩」には、大きく4つの動き方があります。

①屈曲-伸展
前ならえの動きと反対方向への動き。

②外転-内転
横から手をあげる動きと脇を閉じる動き。

③外旋-内旋
肩のねじりの動き。

④水平屈曲-水平伸展
胸の前で手を横切る動きと反対方向への動き。

これら4つの動きが組み合わさり、様々な肩の動きを可能にしています。

ボルダリングにおける「肩、肩甲骨」の3つのポイント

ポイント①:「肩、肩甲骨」は「可動域」を意識して

肩の屈曲の場合、最大可動域を100%とした場合、

肩甲上腕関節:40%
肩甲胸郭関節:20%
肩鎖関節:10%
胸鎖関節:10%

と言った割合で動くと言われています。このように見るとどこか1つの関節に負担がかかり過ぎないように動いているのが分かります。残りの20%は背骨や骨盤、その他の部位も関わってきます。

上記の肩の屈曲の割合が、

肩甲上腕関節:30%
肩甲胸郭関節:30%
肩鎖関節:10%
胸鎖関節:10%

このように変化した場合、肩甲胸郭関節に負担がかかることがわかります。すぐに痛みに繋がるわけではありませんが、この状態が続くことで肩甲骨の位置が左右で差が現れたり、筋のバランスが崩れたりなどの問題が起きてきます。

ポイント②:「肩、肩甲骨」と脊柱の連動を意識して

肩関節複合体と体幹を連動させるという考え方です。ポイント①で解説したの肩の屈曲の割合は全部で80%。残りの20%は脊柱や骨盤、その他の部位の運動によって補われます。

また、下半身の力は、下半身→体幹→上半身と伝わっていきます。下半身の力を指先まで伝えるためにも大切になります。

ポイント③:ホールドを掴んだときの「肩、肩甲骨」の動きを意識して

同じ筋を使うにしてもホールドを掴んだ状態と掴まない状態だと違いがあります。ホールドを掴んだ状態だと、複数の関節と筋が働くことにより関節を安定させます。

このように、手足が固定された状態(ホールドを掴みながら肩を動かす、ヒールフックをしながら膝を動かす、など)での運動を、「閉鎖性運動連鎖(CKC)」といいます。

固定せずに行う運動を「開放性運動連鎖(OKC)」(ホールドに手を伸ばす動き。この時手は自由に動かせます)と言います。

ボルダリングではホールドを掴んだ状態で動く割合が多いので、CKCで体をうまく使えることが大切になってきます!CKCでトレーニングを行うことで

・ つま先から指先まで連動させた動きができる
・ 疲れにくい体になる
・ケガをしにくい体になる

このような効果が得られます。

ボルダリング「OKC」「CKC」トレーニング

「OKC」「CKC」のトレーニングは、自宅でも簡単に行えます。OKCの方が簡単なので、OKC→CKCの順番でトレーニングをオススメします!
それでは動きを入れたトレーニングをご紹介します!

自宅でできるボルダリングトレーニング①:肩甲骨のムーブメントトレーニング(OKC)

まずはOKCです。
肩甲骨を上下左右に大きく動かしていきます。慣れてきたら、大きく円を描くように動かします。
回数は上下左右、円を描く動きそれぞれ20回から始めましょう!

ポイント
・みぞおち、脊柱から一緒に肩甲骨を動かす
・大きく、ゆっくり、丁寧に動きを感じながら

自宅でできるボルダリングトレーニング②:肩甲骨のムーブメントトレーニング(OKC)

OKCでの動きがイメージできたら、次にCKCです。最初は壁に手をついた状態で行なっていきます。慣れたら四つ這いで、できる人は壁に登りながらも挑戦してみましょう!
壁を軽く手で押しながら行うと肩周りの筋に刺激が入ります。
回数は上下左右、円を描く動きそれぞれ20回から始めましょう!

ポイント
・みぞおち、脊柱から一緒に肩甲骨を動かす
・大きく、ゆっくり、丁寧に動きを感じながら
・小指側で押していくイメージ

まとめ

今回は、「肩、肩甲骨」のトレーニングについて紹介させていただきました。

ボルダリングと肩は切っても切り離せない関係です。ケガ予防、パフォーマンスアップの点からも肩、肩甲骨周囲のトレーニングは必要なのでぜひ取り組んで見てください!

・肩関節複合体は5つの関節から構成されること
・体の繋がりを意識すること
・OKCとCKCの違いを意識すること

最初は難しくても少しずつ体が動きを覚えていくとできるようになります。それだけ動きに幅ができたということなので、コツコツまずは1週間続けてみましょう!

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