彼氏が浮気症だったり、二股をかけられていたり、愛が感じられない駄目な男性だと重々分かっていても別れられずに苦しむ人は多いようです。
そういう女性に限って、周りが「別れた方がいい」なんて口を出すと、
「でも優しいところがあるのよ!」とか「彼の良さは他の人には分からない」なんて反発したりします。
それなら悩まなければいいのですが、心の奥底で『このままじゃいけない』『彼と続けている限りしあわせになれない』と感じているのも嘘じゃないんですよね。
前回、“苦しめば苦しむほど相手のことをもっともっと好きになってしまう”という格言をご紹介しましたが、今日は、「”辛い恋”から本気で抜け出したいのに出来ない」と悩んでいる方の参考になるお話をしたいと思います。
前述通り、「それでも私は彼を愛してるんだ」と自分を無理やり納得させて辛い恋を続けている方は、苦しみのせいで余計に”彼を好き”になっている可能性が高いです。それに実をいうと恋や愛とは関係のない心理メカニズムのせいで、辛い恋から抜け出せないでいるケースが多いのです。
「認知的不協和理論」という言葉をご存知でしょうか?
難しく聞こえますが、中味は案外単純なので例をあげてご説明しましょう。
新興宗教が信者を獲得するために使う手段として「世界の終末の予言」がありますが、「何月何日」とはっきり予言した場合、そしてそれが「ハズれた」と分かったとき、信者はどんな行動をとると思われますか?
「なんだよ、ハズれたじゃないか!」とがっかりして、信仰をやめるでしょうか? … 答えはNOです!
以前アメリカで行われた調査で、教祖から「○月○日大洪水によって世界が滅びるが信者のみがUFOによって救われる」といわれ信者になった人たちの例があります。
運命の日、信者たちはUFOを待つために集まりましたが、洪水もUFOも来ませんでした。ところがある信者が「我らの信仰のあつさゆえに世界が救われた!」と叫ぶと、「そうだ、そうだ!」と他の信者も同意を示し、その後は以前よりもさらに熱心な活動が行われるようになったといいます。
……このように人間には、2つの認知の間に矛盾(不協和)があると不快感を覚え、なんとかしてその不快感を解消しようとするというメカニズム…「認知的不協和理論」というものがあります。
他にも分かりやすい例として、高いお金を払って入った習い事などで、内容が見合わないと分かっても止められない等があげられます。
「予言を信じていた」「予言のために財産やエネルギーをつぎこんだ」という認知と、「予言がはずれた」という認知には矛盾がありますよね?
「高いお金を払ってスポーツクラブに入った」という認知と、「待遇がお粗末で効果も上がらない」という認知の間にも矛盾があります。
こういった矛盾した2つの事実があると、人間は片方の認知を自分の都合のいいようにすり替えてしまうんです。
実際には予言ははずれ、駄目なクラブなのに、「予言がはずれたわけじゃない」、「まだ効果が出てないだけ」とすり替えることによって不快さを解消しようとします。
もうお分かりですよね?
認知的不協和理論は「辛い恋から抜け出せない」という人にあてはめることができます。
「この恋に多くのエネルギーをつぎこんだ」「私が彼を選んだ」という認知と、「この恋は失敗だった」という認知は不協和ですから、認めがたいのです。
認めた時点でこれまでの苦労や苦しみがすべてムダになってしまいます。
別れると、その不協和を全て受け入れなければならなくなるので、「いつかは彼も変わってくれる」「苦しいけれど彼を愛している」「私には彼しかいない」と理由をつけて認知を変えてしまう…目先の苦しさから逃れようとして、自分で自分の心を騙してしまうんです。
予言がハズれた後で、よけいに熱心に信仰してしまうのは、深層心理に「失敗したんじゃないか」という不安があって、それを打ち消すために逆の行動をとることで自分を騙しているんです。
駄目な男性に尽くしてしまう人も同じこと、そして尽くして苦しめば苦しむほどその恋から抜け出せなくなる……
「辛い恋」でないと燃えないといったタイプの人もいるかもしれません。
が、『辛くて別れたい恋から抜け出せない』と悩む方の多くは「認知的不協和理論」の作用によって判断の目を曇らせた状態に陥っています。
苦労して結ばれた恋人でもダメな恋はダメ。
多くの投資も、心が千切れそうな我慢も結局はムダだった。
失敗を認める勇気があれば、辛い恋から抜け出して新しい扉を開くことができます。
どうして私はこの恋から抜け出せないの? と悩んだら、「認知的不協和理論」という言葉を一度は思い出して欲しいと思います。
参考文献
「恋ができない うまくいかない あなたのための恋愛心理学」 伊東明 アスペクト
Written by mami
Photo by VaMedia
Written by mami