結婚は、もはや子ども本人だけの問題ではない――そう感じている親御さんも多いのではないでしょうか。
特に30代後半から40代の未婚の子を持つ親世代では、「子どもがなかなか結婚しない」「本人にその気がなさそう」といった悩みを抱えつつも、何もできないもどかしさを感じている人が少なくないといいます。
こうした親たちの思いが生んだ、新しい婚活の形が「代理婚活」です。
本人に代わって親が結婚相手を探すというスタイルは、今や全国各地でイベントが開かれるほど注目を集めています。
今回は、この「代理婚活」の実態を社会的背景からメリット・デメリット、現場のリアルな実態まで含めて詳しく解説します。
そもそも代理婚活とは、親が未婚の子どもに代わって婚活を行うことを指します。
もっとも一般的なスタイルは、「親の代理お見合い会」や「親の縁談会」と呼ばれるイベントへの参加です。
そこでは親同士がプロフィールや写真を持ち寄り、自分の子にふさわしい相手を探す──というわけです。
ユニークなのは、子ども本人がその場にいないこと。
場合によっては、親が交渉・打診を行い、後日子どもに紹介するという流れになります。
「お見合い」の需要が減少傾向にある現代において、一見すると代理婚活は時代錯誤に見えるかもしれません。
しかし、実はこの代理婚活のニーズは年々高まっており、今では成婚に至ったケースが珍しくありません。
代理婚活という方法や概念は、いつ、どのようにして生まれたのでしょう?
ここでは、代理婚活が生まれた理由や背景について簡単に解説します。
近年、晩婚化・非婚化が進んでおり、男性の平均初婚年齢は30歳を超え、女性も同様に遅くなっています。
また、国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳時点で結婚経験がない「生涯未婚率」は年々上昇しており、2020年には男性で約28%、女性で約17%に達しました。
こうした晩婚化・非婚化の加速から男女の結婚への意欲が低下し、それに伴い未婚の子を持つ親の懸念が大きくなった結果、代理婚活という合理的な方法が誕生したと推測されます。
晩婚化・未婚化の加速と併せ、仕事や生活に追われる中で、異性との出会いが極端に少ないという声もよく聞かれます。
特に近年は女性の社会的自立が社会的課題となっており、働く女性が増加しています。
しかし、だからといって社内恋愛をする人口総数が急増するかというとそういうわけでもなく、むしろ「男女が出会う機会が減っている」という声が大きくなる一方です。
特に地方では人口減少も相まって、自然な出会いが難しいのが現状です。
70代前後の親世代にとって、子どもの結婚は「一人前の証」とする価値観が色濃く残っており、「このまま独身で老後を迎えさせるわけにはいかない」という強い思いが代理婚活へとつながっているようです。
中には、そんな親に対して「大きなお世話だ」「時代錯誤も甚だしい」と感じる方もいるでしょう。
しかし、先述したように現代は晩婚化・未婚化が加速している上に、男女の出会い機会も減少傾向にあります。
結果的に、「結婚をあきらめざるを得ない世の中ではあるものの、本心では結婚を望んでいる子」と、「子どもが家庭を持ち、早く一人前になって安心したい親」、相互のニーズがマッチングするのが「代理婚活」なのです。
代理婚活はある意味、時代に即した合理的なやり方と言えるかもしれません。
実際に代理婚活のイベントに参加した方々からは、次のような声が聞かれます。
・「うちの子は長男で家業もあるので、将来一緒に働いてくれる人を探しています」
・「娘は仕事に一生懸命で、優しい性格なんです」
会場には子どものプロフィールや写真、学歴・職業・年収などの情報が整然と並び、まるで就職説明会のような熱気が漂うことも。
主催者が仲介役となり、マッチングが成立すれば後日、当人同士の面談へと進みます。
近年では、オンラインでの親同士のマッチングシステムや、Zoomでの「親の代理面談」なども登場し、IT化が進むことでさらに敷居が下がっています。
結婚は当人同士の問題であると同時に、家と家がつながる行為でもあります。
代理婚活では、家庭の方針や価値観が親を通じてスムーズに伝わるため、ミスマッチが起こりにくいというメリットがあります。
また、仕事で多忙な子どもや、恋愛に消極的な性格の子どもに代わって親が行動することで、結婚へのきっかけを生み出せるのも大きなメリットでしょう。
さらに、代理婚活は、ただの婚活イベントではなく、親同士が情報を共有したり励まし合ったりする“共助の場”にもなっています。
親と子、さまざまな面において、代理婚活は相互のニーズを満たしやすいイベントなのです。
代理婚活のもっとも大きなリスクは、親の行動が「お節介」や「押しつけ」になってしまうことです。
本人の意志や希望を無視してマッチングを進めると、結果的に親子関係が悪化する恐れもあります。
また、プロフィールには年収や学歴、職歴などの詳細な個人情報が含まれるため、個人情報保護の観点から注意が必要な点もデメリットと言えるかもしれません。
代理婚活は、結婚観や家族観が多様化する現代において、一つの新しい選択肢です。
「自分の幸せは自分で決める」という風潮がある中で、あえて親が手を貸すことには賛否両論があります。
しかし、親が子どもを思う気持ちに偽りはなく、そこに丁寧な対話と理解があれば、代理婚活は有効な手段となり得るでしょう。
少子化が進む中で、家族がより能動的にライフプランに関与する流れは、今後さらに拡大する可能性があります。
もちろん、「親が婚活をするなんて恥ずかしい」と思う人もいるかもしれません。
しかし、そこには子どもを思う深い愛情と、「家族としてできることをしたい」という、親としての真摯な願いがあります。
代理婚活は、単なる出会いの場ではなく、親子の対話と信頼、そして家族の未来を見つめるきっかけでもあるのです。
子どもが納得し、自らの意志で一歩を踏み出すための“最初の種まき”として、代理婚活を前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。
Written by はるお