ここ数年、20~30代女性の企業がブーム化しているのもあり、「自立」「独立」「好きなことを仕事にする」といったことをアピールしたり、支援したりするセミナーを多々見かけます。自分の経験からノウハウを語る講師も多いそうで。
けれど、「本当に意識が高い人」と、「痛い意識高い系女子」はちょっと違います。常見陽平氏による『「意識高い系」という病』(ベスト新書)によると、痛い意識高い系とは以下の通りになるんだとか。
・SNSでのプロフィールをやたらと盛る
・やたらと団体(グループ)を立ち上げようとする
・自分の人脈をやたらと自慢。利用する
・ソーシャルメディアで意識の高い発言を連発
・人を見下す
うーん……こんな風に思われるのは、結構ツラいですね。「痛い意識高い系女子」と「本当に意識が高い女性」の違いって、何なんでしょうか?
「いつかビッグになってやる」と豪語するだけで何もしない男性に、女性は冷たい眼差しを向けますが、痛い意識高い系女子には、それに近い危うさを感じます。自意識が高く、自立や自己実現を主張するものの、具体的な活動が見えなくて、同じマインドの仲間とお茶会や食事会を開いていることが多いのです。
自立や自己実現は、確実な売上のある営業活動によって成立します。また、そのためのスキル、知識、経験も欠かせないでしょう。
しかも、脱サラして会社員時代より収入を増やすというのは、並大抵のことではありません。既婚女性が趣味を兼ねた自宅サロンを作るなら儲けを度外視するかもしれませんが、生活を支えるだけのお金を得ようとするなら、高い意識をアピールするだけでは難しいといえます。
本当に意識が高い女性は、「何をしてお金を得るか?」「売上を増やすための具体的な策」が明確です。漠然とした夢は抱きません。そして、自分の目的を実現するには、どういうアクションを起こせばいいのか、どんなステップを踏んでいけばいいのかを、動き出す前に明らかにします。
筆者が尊敬する30代女性で、現在は東京都渋谷区に個人事務所を構えている方がいます。元々は地方で小さなお店を開いていましたが、成功を夢見て上京し、本を出したいと何百枚も原稿を書きためて出版社に掛け合い、そのための人脈も作りました。
上京から6年、その方は今年まで13冊の本を複数の大手出版社から出してらっしゃいます。彼女のような人こそ、本当に意識が高い人だと思っています。
「本を出したい」という目的が明確にあり、それを叶えるための実行力、出版社に自らアポを取って原稿を売り込む営業力があるからこそ、成功できているのです。
彼女は人脈も広く、つねに「いろんな人と出会いたい」と考えるようですが、それは単に群れるためではなく、自分が不得意とする分野が得意な人や、自分にない知識を持つ人と接して刺激を与えられたい、もっと成長したいと考えるため。
また、彼女は一人だけに執着したり、派閥じみたグループを作ったりはしません。「みんなと公平に、対等な付き合いをしたい」というスタンスを貫きます。
一方、痛いと思われてしまう「意識高い系」は、自立や自己実現というカッコいい流行りに乗せられて、アピールはするものの具体的な目的の実現化ができず、オシャレなカフェやホテルのラウンジでお茶会を繰り返します。
もちろん、本当にためになるセミナーや談話会もあるのですが、そこで教わることを100%生かすことはできないのでしょう。
渋谷に事務所を構える成功女性と、いわゆる「意識高い系女子」の最大の違いは、ビジネススキルです。ブームとはいえ、誰もが簡単に個人事業主になって、平均的な会社員の月収より多く稼げるわけがありません。
独立開業した人の、1年後の生存率は62.3%、3年後は30%というデータもあります。約3分の1は1年を待たずに廃業してしまっているのです。
自立して、自分の好きなことを仕事にしながら、自由に生きる。それは、とても素晴らしいことです。しかしそこに、堅実で安定した収入が見込めないと、どれだけ意識が高くても自己実現は不可能でしょう。ビジネスは高い意識だけでは成り立たないのです。
独立ってステキだなと思っても、脱サラして開業したときに、毎月まとまった収入を得るだけの「商売っ気」が自分にあるのかを、冷静に確認してみることが大事。そうしないと、痛い「意識高い系女子」と思われてしまうかもしれません。
Written by 沙木貴咲