ご質問誠に有難う御座います。
今回はいつもと視点を変えて、経済学という観点から婚活について考えてみましょう。
難しい話になりますが、出来る限り噛み砕いてお話しさせて頂いたのでお付き合い頂ければ幸いです。
また、このコラムは正直に“色々な意味で”言ってボツになるかと思ったのですが、掲載を許可してくださった恋学の担当者の方にはこの場を借りてお礼申しあげます。
早速ですが「婚活デフレのジレンマ」という言葉をご存知でしょうか?
おそらくはご存知の方は一人もいらっしゃらないことと思います。
なぜならこの言葉は私が先ほど作った言葉で、検索しても1件もヒットしなかったので誰もご存知ではないことでしょう。
今回このご質問を頂いて、私なりに今の「婚活」の状況を考えてみました。
すると今日の婚活の状況を適切に表現する言葉として「婚活デフレのジレンマ」は極めて適切なものであると思います。
しかし「デフレ」やら「ジレンマ」やらただでさえ難しい言葉が乱立している上、それを組み合わせた造語なのですから、意味がさっぱりわからないことでしょう。
ですので今回のコラムではこの言葉の意味を中心に、今の婚活トレンド?というか実情をお話しさせて頂きたいと思います。
まず「デフレ」ですが、これは「物の価値が下がる」という意味で御座います。2017年の時点で、35歳以下の方は物心ついた時からずっとデフレを経験していると言っても過言ではありません。
洋服にしてもコーヒーにしても車にしても、ここ20年ほどひたすらに値段が安くなっているとは感じませんか? もちろん技術革新やシステムの改善というのも大きな要因なのですが、そもそも「企業がそういう努力を本気で行う」というのがすでにデフレなのです。
次に「ジレンマ」ですが、これは簡単にいうと「あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちが立たず」という状況のこと。
特に有名な例では「囚人のジレンマ」というものが有名ですが、この囚人のジレンマを物凄く簡単に説明すると「一人一人が自分にとって最善の行動をしていると、全体として見て最悪の行動になることもある」ということ。
例えば武器。
日本も含め、ほぼ全ての国家は何かしらの「武器」を持っていますが、こんなもの武器商人を除けばみんな持ちたくもないのです。
ですが、相手が武器を持っているのに、自分は持っていない、という状況だけは避けなくてはいけないので、結果としてみんなが武器を持つようになる。
なぜなら自分が武器を持っていれば「自分だけ武器を持っていない」という最悪の事態だけは避けることが出来るからで御座います。
もし、みんなが一斉に武器を捨てることが出来るのならば、それに越したことはありません。
ですが現実においてそれは不可能なのです。200近い国家の中で1カ国でもその約束を破ったら、その国家の一人勝ちになってしまう。ですので、一斉に武器を捨てよう、なんていうことは起こりえません。
そもそも「物の価値が下がる」という意味の「デフレ」で御座いますが、婚活デフレというのは「婚活において女性の価値が暴落している」という意味で御座います。
「婚活において、女性には価値がない」
この言葉の意味を、どうか正確にご理解くださいませ。
「デフレ」もそうですが「物の価値が下がる」ということの原因を考えるためには、そもそも「価値」とは何か、ということを理解しなければなりません。
このことを理解しないと、私が「最近の女ってクソだよね!」と言っているように聞こえるかもしれませんが、私はそんなことを言いたいわけではないのです。
物の価値が下がる原因というのは本質的には2つの原因しか御座いません。
1つは「需要の減少」つまり欲しいと思う人が減るということ。
もう1つは「供給の増大」つまり売りたいと思う人が増えるということ。
確かに多くの場合において商品の質が落ちれば価値が下がりますが、これは欲しいと思う人は減るということが原因で御座います。
逆に商品の質が全く下がっていなくとも、欲しいと思う人が減れば商品の価値は下がるのです。
これを難しい言葉で言うと市場原理と言います。厳密には違いますが、まぁ概ね問題ないでしょう。
ここで重要なことは、女性が結婚をするのが困難になったここ20年ほどで、女性の質や能力が落ちているというわけではない、ということ。
これは非常に重要なことなのでくれぐれもご注意くださいませ。一切、質が落ちなくとも「欲しい人」が減れば価値は下がるのです。むしろここ20年ほどで女性は圧倒的に綺麗になりましたし、収入という意味でも格段に上昇した、つまり質は上がっているとさえ思います。
しかし、その質の上昇ではとても補えないほど「需要」が減ってしまった。
婚活市場で言えば「欲しい人」というのは、ズバリ「結婚したいと思っている男性」のことで御座います。
この数が圧倒的に減ってしまったので、これほどまでに婚活において女性の価値が暴落しているのです。
それでは女性の価値の暴落に歯止めをかけなくては、婚活はどんどん厳しさを増す一方で御座います。婚活市場において女性という存在の価値が下がるのですから、女性全員誰にとっても損な状況であると言えるでしょう。
しかし、この歯止めを邪魔しているのが、ジレンマで御座います。
【端的に言って、今日ここまで婚活が叫ばれる原因は「晩婚」などの問題では御座いません。
問題の本質は1つだけ。
結婚したい女性はいくらでもいるのに、結婚したい男性が存在しないということ。
この時点で答えは9割出ているのですが、婚活で自分磨きとかそういう問題を考える前に「男性を増やす」か「女性を減らす」以外に根本的な解決は不可能である、ということが分かります。自分磨きをして、女性という商品の質を上げたところで、需要が増えなければ何にも解決しない。質が高い、と価値があるは全く別の概念なのです。ですので今「女性」がすべきことは何をおいても、男性を増やすこと、それ以外には御座いません。】
というのが、私みたいな男からこの状況を見たときに感じる感想の話。
これからの日本をどうするか、という大きな話で見れば「どう考えても男を増やすくらいしか方法ないじゃん」と誰もが判るのですが、ここで非常に困った問題「ジレンマ」が発生します。
確かに長い目で見れば、大きな視点で物事を見れば、結婚したい男性を増やすことこそが最も重要かつ効果的で御座いますが、短い目で小さな視点で物事を見れば「数少ない男を奪い取る」ということこそが最善手になってしまっている。
「女の子でみんなで協力して、男性の数を増やそう!」と考えるのは極めて大きな視点での話。
個人の視点で考えればそんなたいそれたことを考えるよりも「自分を安売りしてでも、結婚する」ということの方が最適解なのです。
これはデフレの時に極めて多く見られる現象で御座います。
その典型例が「牛丼価格戦争」であり、あっちが下げればこっちも下げると、競うように価格を下げていたのを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。どっちの牛丼屋も自分の首を絞めるような低価格戦略を取りたくなかったのですが、自分だけ低価格を辞めてしまうと自分だけが潰れてしまうので、誰もこの不毛な戦争から抜け出すことが出来ないのです。
ですので、この価格安戦争を終わらせるためには「誰一人裏切り者を出さず、結託する」という極めて非現実的な条件が存在します。
牛丼チェーン程度であれば、どことは言いませんが大手3社さえ裏切らなければ価格の暴落を失せぐことが出来ますが、これが婚活になると全国の何十何百万という女性が「誰一人裏切らない」という事実上どう考えても不可能な条件になってしまうのです。
女性の価値が暴落しているのは需要と供給の関係で仕方のない面もございます。
ですが本来であれば、女性が女性のために価値が暴落しないように歯止めをかける行動をすべきであったのにもかかわらず、一人また一人と自分の値段を下げて安売りと初めてしまったのです。そうすると値下げをしていない女性も値下げをせざるを得なくなってくる。
みんなが協力して価値の暴落に歯止めをかける、というのが女性にという大きな括りでは最善の行動でした。
しかし個々人の視点で物事を考えると「その協力を裏切り、抜け駆けをする」というのが最善になってしまう。
この矛盾こそが婚活デフレのジレンマの「ジレンマ」で御座います。
すると、一番割りを食らうのは価格競争についていけなくなった女性。
自分より若くて可愛くて性格の良い女性が、自分より低価格で売りに出ているのです。そんな商品、誰一人として買いません。
こうなってくると、もはや「自分磨き」とか「婚活」のようなその場しのぎの対処ではどうしようもありません。
婚活は経済的に言えば「営業」で御座います。どんな天才営業マンでもそんな商品を売ることはできません。
しかし、ある意味でこの女性たちは「女性の価値」の暴落に歯止めをかけようと努力をしていたのです。
その努力が「裏切り者」たちの抜け駆けによって破綻してしまったとも言えるでしょう。
以上が私が考える今日の婚活市場であり、婚活市場において女性の価値がどんどん暴落し、なおかつ女性自身がその暴落に貢献してしまっている、という状況を「婚活デフレのジレンマ」と名付けました。
結婚適齢期の女性が「男性の数を増やそう!」と考えないのは仕方がありません。何故なら、彼女たちにとって最善の行動は「抜け駆けしてでも結婚する」なのですから。
また、残念ながら男性にあれこれ言ったって仕方がありません。だって彼らはそもそも結婚したいと思っていないのですから。
戦争中に敵に対して「もうちょっと手を抜いてよ」というようなもので御座います。
そもそも時代の流れと言ってしまえば、それまでの現象で御座います。女性の質が悪くなったとか、そういう話ではなく、ただ生まれてくる時代が悪かったのです。
たまたま「需要と供給」が不均衡な時代に生まれてしまった。
物事が移り変わる時期、過渡期に生まれてしまった以上、時代が変わるために必要な「痛み」を被るのは仕方がありません。誰が悪いわけでもなく、ただ運が悪かったのです。それ以上でも以下でもないのです。
しかし、とはいえ私なりにこの状況を考えると、不当に状況の悪化に貢献している存在がいるのではないかと感じます。
時代が変わるときに痛みが発生するのは仕方がありませんが、その“痛み”を不当に大きくしている存在がいる、そんな気がしてならないのです。
この状況を是正するとしたら、結婚したい女性の数を減らすか、結婚したい男性の数を増やすか、の2択しか解決方法は御座いません。しかし、その解決策と真逆の行動を取り続ける産業がある。
結婚をしないことの不安を煽り、より多くの女性を結婚に向かわせている反面、男性の結婚欲を刺激するようなことはほとんど何もしない。
婚活サイトを見てください。1つでも“男性向け”に作られたデザインのサイトが御座いますか。
婚活パーティーを見てください。増やさなくてはならない男性の値段の方が安いパーティーが御座いますか。
婚活コラムを見てください。男性に対して「結婚した方がいいよ!」というコラムがどれだけありますか。
重ね重ねになりますが、婚活市場において女性に価値は御座いません。
これも重ね重ねになりますが、これは女性の質が下がったのではなく、単純に需要と供給のバランスが崩れたから。
私は今の女性がダメだ! と言うつもりは全くないのです。
しかし、崩れてしまったものは仕方がありません。ですが需要と供給のバランスを整えるには、男性の数を増やすしかない。
そのためには婚活関係の企業は多少、頭を下げてでも男性をこの市場に連れくるしかありません。
それこそが最も根本的な婚活ビジネスなのだと思います。
とはいえ婚活関連の会社様が男性に頭を下げないのも分かるのです。なぜならそんなことをしても、少しもお金にならないから。
ですが、いつまでも女性に向けてのサービスしか作っていない限り、それは森を焼き続けるビジネスとしか言えないのではないのかと思います。誰も木を植えずに、ひたすらに伐採することだけを考えている。
最後はどうなるか、なんて火を見るよりも明らかです。
真面目な会社は「男がいないからもう婚活なんて無理」と倒産するかビジネスを転換することでしょう。
しかし、圧倒的多数である真面目ではない会社は、結婚という商品を提供することなく、「結婚できるかもよ」という夢と「婚活して頑張ったのにダメだった、でも頑張ったから悪いの私じゃなくて、あの会社や今の男たちや時代が悪い!」という自己満足を提供するサービスになることでしょう。もう半分くらいなっている気もしますが。
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Written by ラブホスタッフ 上野