「こんなに頑張っているのになかなかうまくいかない……」
「努力したいのにうまく努力できない……」
努力がなかなか実らずに苦しむ人もいれば、そんな人に対し「どうしてこの程度のこともできないの……?」と悩む人も。
実は両者にはそれぞれの課題があります。
今回は、努力できない人の特徴や、ムダな努力をしないためのハック。さらには努力できない人への対処法について解説します。
努力できずに悩んでいる人も、そんな人に悩まされている周囲の人も、本記事を参考に人間関係やそれぞれの環境を見直してみてください。
はじめに、努力できない人の特徴をご紹介します。
タスクを先延ばしにしてしまい、あらゆる仕事を納期ギリギリで進めるタイプです。
このタイプは能力が低いわけでも努力ができないわけでもなく、単にタスク管理やスケジューリングが苦手なケースが多いようです。
他者にスケジュールやタスクを管理してもらったり、リマインドしてもらったりすることで改善する可能性があります。
また、仕事に着手するまでには時間がかかるものの、着手さえしてしまえば円滑に進行できるというタイプも多いようです。
このようなタイプは、とにかく「着手せざるを得ないシステム構築」を工夫するのがよさそうです。
上司などに嘘をつき、仕事の進捗や成果などをごまかすタイプも「努力できない人」「努力しない人」と評価されやすい典型例です。
実際には努力していないどころか、むしろ他の人よりも何倍も努力しているケースも。ただ仕事の適性が低かったり、苦手分野での仕事だったりといったことが原因で、なかなか成果があがらないのです。
努力が正当に報われないと、精神的なストレスや不満も余計に大きいでしょう。
この場合は、仕事内容や環境を変えるなど抜本的な対策が必要になりそうです。
過去の失敗によるトラウマや、他者からの非難や批判への過度な恐れ、周囲に迷惑をかけることへの異常な抵抗感などから、挑戦や冒険を極度に嫌うタイプです。
堅実なルーティンには適正が高いかもしれません。しかし生産性の向上やチームの最適化などに能動的に取り組むわけではないので、「努力できない人」「努力しない人」と評価されてしまいがちに。
トラウマの克服や自己肯定感の向上のためには、とにかく大なり小なり成功体験を積み重ねるのが正攻法でしょう。
そもそも「努力」はするべきものなのでしょうか? あるいは、しなければならないものなのでしょうか?
もしかすると、多くの人が「努力」と「忍耐」を混合してしまってはいないでしょうか?
ここからは、努力の代わりにするべき代案をご提案します。
研鑽(けんさん)とは、学問など特定の何かへの知見や技術を深めることをいいます。
たとえば自分の好きなことや興味のあることについて調べるのを嫌う人は、あまりいないのではないでしょうか。
むしろ好きなことや興味のあることは、積極的に調べたくなるはずです。
料理好きな人は食材を切る作業を練習と思わないでしょうし、楽器が好きな人は楽器の演奏を楽しむ行為を「努力して練習している」とは自覚しないはずです。
嫌なことを無理に行うから努力が必要なのであって、大半の人間は本来「好きなことを頑張っている状態を努力とは自覚しない」はずなのです。
努力でなく研鑽を目的に、研鑽できるような仕事や環境に身を置くことから考えてみてはいかがでしょうか。
自分に合う仕事、自分に合う環境に身を置けば、高いパフォーマンスを発揮できる人が大半です。
一方、自分に合わない仕事、合わない環境に身を置くと、パフォーマンスは下がってしまうものです。
人間誰しもそれぞれ得手不得手がありますし、好き嫌いもあります。当然合う合わないもあるでしょう。
苦手なものを努力で克服しようとするのではなく、そもそも最初から得意なことで勝負できるように環境を最適化したり、柔軟な人事などで適材適所を実現したりする視点が大切です。
努力で何ともならない問題は、工夫して何とかする視点を持ちましょう。
たとえばタスク管理がどうしても苦手なら、タスク管理アプリやAIを利用して管理したり、計算が苦手なら表計算ソフトを使ったりといった具合です。
コミュニケーションが苦手ならチャットツールなどのコミュニケーションアプリを使い、状況に応じた定型文を登録しておくのもいいでしょう。
このように、努力による負担やストレスが大きい部分は外部ツールを積極的に利用し、工夫して補うのがおすすめです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)がビジネスシーンにおいても普及してきている昨今、むしろ人間の苦手や不得手を努力などの根性論で克服しようとする発想の方が時代遅れです。
ツールをうまく活用し、実らない努力でなく実る工夫にコミットしましょう。
さて、ここまでは「努力できない人」の視点でお話ししてきました。
ここからは「努力できない人の周りの人たちはどうすればいいか」という、「周りの人たち」の視点での対処法をご紹介します。
「努力できない人」と「その周りの人」は、一見すると前者が後者に対して一方的に迷惑をかけているように見えますが、実はそうではありません。
実際には双方向の問題であり、それぞれに克服すべき課題があるのです。
努力できない人には、物事の管理が苦手な人が多いようです。
たとえばタスクの管理やスケジュール管理だけでなく、顧客管理や在庫管理から自己管理に至るまで。
そうした苦手分野のパフォーマンスに対して「普通はできるだろう」という先入観で評価しようとすると、当然管理が苦手な人は管理することそのものに大きなリソースが奪われてしまい、総合的なパフォーマンスが著しく落ちます。
ですから、積極的なツールの導入やシステムの刷新、チーム編成などで、管理に多大なリソースを割かずに済む土壌をまずは作ることが重要です。
まずは「忍耐は美徳」という古い価値観や固定観念を捨てましょう。
耐え忍ぶ時間があるなら、業務フローをブラッシュアップし、より効率的かつ低コスト高パフォーマンスで成果にコミットするのが現代的な視点です。
そのためには「いろいろな方法を試す柔軟性」や「さまざまな手段を検証する客観性」、「人事や業務を柔軟に再配置する流動性」などが必要です。
常識を打ち破るくらいの姿勢で、新しい価値観を創出する視点を持てるよう心掛けましょう。
努力できない人に対し「努力をしろ」と迫るのは、一般人のあなたや私に「大谷翔平選手のように、大リーグでのホームラン記録と盗塁記録を更新し続けろ」と迫るようなもの。
人間誰しもできることとできないことがあるものです。
世の中にはメモがとれない人がいますし、文章を正しく読み正しく理解できない人もいます。議論や討論ができない人もいれば運動や計算が苦手な人もいます。
苦手なことがある人に対し「なぜこんなこともできないの?」「やる気がないだけだ」とイライラしたり怒りを覚えたりするのは、実はあなた自身の感情管理の問題。
誰かを責めたり咎めたりしたくなったら、そこに自分の感情的な課題やメンタル課題がないか、今一度冷静に自分自身を振り返ってみるといいでしょう。
努力する人は確かに美しいですし尊いものです。
しかし、それなりの年齢になってから、とある事実に筆者はようやく気付きました。
それは「努力している人が美しい」のではなく、「真剣に何かに打ち込んでいる人が美しい」ということです。
むしろ何かに必死に耐え忍んだり、苦しみながら暗中模索していたりする人を「美しい」とは思いません。胸が苦しくなったり悲しくなったりするだけです。
忍耐や我慢でなく、研鑽や没頭や夢中にこそ、努力の美しさが宿るのではないでしょうか。
私たちはそろそろ「努力」という言葉への解像度をもっと高めて、努力そのものの価値を見直さなければならない局面に差し掛かっているのかもしれません。
Written by はるお