本当に辛い恋(からい恋、ではなく、つらい恋)とは、言うまでもなく、愛する人が亡くなってしまった恋です。ここが辛い恋心の最大値です。
だから映画や小説では、愛する人が亡くなるという設定がよくなされます。感情の最大値をとって制作しないと、話題性に欠ける、というオトナの事情もありますが(話題性が確保できないとお金にならないので)、最大値をとることで、恋心や人間を完璧に描けるからです。
さて今回は、もう少し現実的な辛い恋の卒業方法について見ていきましょう。
現実的な辛い恋は、総合的にいえば「自分の思いが相手に通じない時」ですよね。たとえば片思い。片思いの気持ちが彼に届かなくて辛い、と嘆いている女子は大勢いますよね。
あるいは交際中であっても、彼に思いが届かないと辛いですよね。たとえば、あなたが彼の健康を気遣って、一所懸命食事を用意したにもかかわらず、彼が「マズイ」と言ったら、悲しいですよね。
思いが届かない時、あなたはどうするべきなのか?
もっとも現実的な方法は、おそらく「彼と話し合う」ことでしょう。「わたしは頑張ってご飯を作ったのに、なぜマズイって言うの?」と、話すべきでしょう。ケンカになってもかまわないので、話すべきでしょう。
それでも、よく言われるように「自分の過去と相手は変えることができない」ので、話し合ってもなしのつぶてで、あなたの気持ちが通じない、ということもあるでしょう。何回話をしても、思いが通じない……この時点で、おおむね人は別れを決意します。
この「決意するまで」の時間も辛いわけですが、このへんのことは、みなさん自分の力で乗り越えているようですよね。新しい恋人候補に辛さを告白するとか、女友だちに相談に乗ってもらうとか、そうやってうまく乗り越えているでしょう。
さて、ここからが辛さの本番です。
彼と別れてしまって、せいせいした、ということであれば、辛い恋の卒業方法なんて知る必要がありません。別れるまではみな平等に辛さが用意されており、その「課題」をクリアしてせいせいしたのであれば、「お疲れ様」以上、おわりです。
ここからさらに彼に対して気持ちを引きずる人がもっとも辛い。彼のことは嫌いで別れたけど、やっぱり彼に気持ちが残っていて、あんなこともしてあげたかったと思う、こんなこともしてあげたかったと思う……こういう思いが別れのあと胸によぎると、もう辛くて辛くてどうしようもないですよね?
これは恋人の死に等しいから辛いのです。別れた彼に「こんなことをしてあげたかった」と思ったところで、もう「あの頃の彼」はいないわけです。時は前にしか進まないから。だから恋人の死による辛さに等しいのです。
そういうとき、人はどうするのか?
歌います。歌うしかないから歌います。時は戻らない、あの頃の彼は戻らない、もうどうしようもないから歌うのです。今の歌は軽いものが多い、と言われているのは、こういうことです。
もう2度とどんなに努力をしても手に入らないもの、これが本来歌う「べき」ことです。歌わなくてもいいこと(たとえば彼に会いに行けるにもかかわらず、会いたいと歌うから)「軽い」のです。会いに行けばい~じゃん、以上、終わり、と思う(口の悪い人?)がいるのです。
辛い恋の卒業方法は、「歌う」です。女友だちとカラオケに行って、歌うのです。しっかりと創られた失恋ソングを歌うのです。古来、人はそうして辛さを乗り越えてきました。
毎日カラオケに行ける人も少ないかと思います。週1でカラオケに行って、たとえば3ヶ月もすれば、辛さは少し薄れてくれます。時の流れも、辛い恋を忘れさせてくれる、いわばあなたの味方です。
歌うこと、時の流れを味方につけること。本当に辛い恋の卒業方法は、これくらいしかありません。そう思えば、「恋は面倒」と思う人の気持ちも、理解できるというものです。
Written by ひとみしょう