発達障害ってつまりはどういう障害なの? 発達障害の基本3つ

近年、ダイバーシティや多様性に伴い「発達障害」が注目されています。

生きづらさを訴える「大人の発達障害者」も増加しており、社会問題として多くの人が直面している問題でもあります。

しかし、発達障害が具体的にどのようなものなのか、よく知らないという方もまだまだ多いのが現状です。

今回は、発達障害の基本について詳しく解説します。

発達障害には大きく3つの要素がある

発達障害は、生まれつきの脳の機能の違いにより、コミュニケーションや行動、学習、注意力などの能力が偏った状態にあることを指します。

この特性は一人ひとり異なり、全体の能力が低いというわけではなく、特定の分野で課題を抱えるケースが多いのが特徴です。

発達障害は、大きく次の3種類に分けられます。

1.注意欠如・多動症(ADHD)

ADHDは、注意力が続かない(不注意)や多動性、衝動性が主な特徴です。

たとえば細かい指示を聞き逃したり、静かに座っているのが難しかったりといった行動が見られます。

一般的な人からすると、彼らのこうした行動は「怠けている」「ふざけている」「反抗している」ように見える場合があります。

実は筆者もそう感じていた側の人間です。

しかし、実際には怠けているわけでもふざけているわけでも反抗しているわけでもなく、彼らは本当に脳の特性から「一般人にできることができない」のです。

このことを真に理解するまでには時間がかかりました。

筆者の理解の妨げていたのは、「人間の脳の機能性なんてみんな大して違わないだろう」という思い込みでした。

人間の脳は、実は筆者が想像していたよりも遥かに多様性に満ちていたのです。

2.自閉スペクトラム症(ASD)

2.自閉スペクトラム症(ASD)

ASD(以前はアスペルガー症候群とも呼ばれていた)は、コミュニケーションや対人関係での困難、興味や行動の範囲が限られるのが特徴です。

特定の分野で優れた能力を発揮するケースもあります。

ですが、一般的にはコミュニケーションの問題から、周りから嫌われてしまったり、のけ者にされてしまったりといったケースが多いようです。

3.学習障害(LD)

3.学習障害(LD)

読む、書く、計算するなどの特定のスキルに困難を抱えるのが学習障害です。知的な発達には問題がないため、他の部分で能力を発揮することも多いです。

たとえば、会話は普通にできるのに暗算ができないとか、本が読めない──といった具合です。

この他、字を書くのが苦手、運動が苦手といった発達性協調運動障害という症状もあります。

発達障害は基本的に複数の要素が併発しているように見える場合が多く、どれか一つだけ発症することは原則として「ない」といわれています。

ただし、それぞれの要素がグラデーションのように強く表れたり弱く表れたりします。

そのため、状況や環境、相手によっては特定の要素が強く見えたり、特定の要素がほとんど感じられなかったりする場合もあります。

大人の発達障害とは

発達障害は子どもの頃に診断されるケースが多い一方、大人になってからその特性に気付く人も増えています。

その理由の一つとして、幼少期には学校生活や家庭環境で周囲のサポートがあり、自分の特性に気付きにくかったことがあげられます。

しかし、職場や家庭など、社会における多様な人間関係の中で

「なぜ自分だけがうまくいかないのだろう」

と感じる場面が増え、発達障害の可能性を疑うようになるケースが増えています。

大人の発達障害にはさまざまな特徴があります。

たとえば、ADHDでは締め切りを守ることが難しい、忘れ物が多い、計画的に行動できない──といったケース。

他にも、ASDゆえに暗黙のルールを理解しづらい、頑固だと思われるなど、人間関係で苦労するケースが多いようです。

LDでは読み書きに時間がかかる、計算ミスが頻発するなどの困難があります。

こうした特性を持つ大人は、自分の問題を「努力不足」と捉え、自分を責めてしまうことが少なくありません。

しかし、これらは特性であり、工夫やサポート次第で対応が可能な場合が多いことを理解することが大切です。

特性がない、あるいは薄い大半の人は、彼らのこうした特性を「努力不足」と評価しがちです。

この大きな誤解こそ、人間の多様性への理解を妨げる大きな障壁になっていると筆写は感じます。

発達障害者に必要な合理的配慮とは

発達障害者に必要な合理的配慮とは

合理的配慮とは、発達障害者がその特性によって日常生活や職場、学校で困難を感じる状況を緩和し、平等な環境を提供するための調整や支援を指します。

これは、社会全体で多様性を尊重し、すべての人がその能力を発揮できるようにする重要な取り組みです。

しかし、実際には合理的配慮がなかなか浸透しないのが実態のようです。

理由は先述したように、大多数の人が発達障害者の特性を「努力不足」「甘え」と解釈し、感情的な理由から非協力的になってしまうこと。

そして、「あなただけ特別扱いするわけにはいかない」といった、多様性の真逆をいくような連帯責任的な、古い価値観に縛られていることが主な原因です。

しかし、現実問題として、発達障害者を合理的に配慮すれば、彼らのパフォーマンスは高まるわけですから、チーム全体としてのパフォーマンスも上がりやすくなります。

また、「あなただけを特別扱いするわけにはいかない」という思想も危険で、筆者はまったく反対の「一人ひとり全員を特別扱いすればいいじゃん」という考え方を推しています。

理由は単純で、その方が全体の経験値や個々の繋がり、能力が上がりやすいからです。

さまざまな特性、感性、理念、思想を持った人が世の中にはいます。

ですが、それぞれが相互理解に努め、共生社会を実現するには、社会全体をいかに柔軟にコントロールするかが大きな課題のように感じます。

そしてそのためにはもちろん、我々一人ひとりが柔軟な視点で物事を評価し解釈する必要があるのです。

多様性を理解すれば自分自身の可能性も開ける

今はまだまだ悲観的に語られることが多い発達障害ですが、発達障害は本来、決してネガティブなものではありません。

本記事を通じて「発達障害とは何か」と少しでも関心を持ち、考えるきっかけになれば幸いです。

Written by はるお

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