部下に注意をしようとしても、途中で言葉が弱まってしまう上司は少なくないようです。厳しく言えない背景には、共通する心理がいくつか隠れています。今回は部下に対してつい甘くなってしまう上司の特徴を解説します。
部下に注意をした瞬間、その場の空気が悪くなったり距離を置かれたりするのではないかと身構えてしまう上司は多いようです。とくに日頃から良い関係を築いてきた相手であるほどその不安は強く出やすく、伝えるべき内容よりも「嫌われたくない」という気持ちが先に立ってしまうのです。本人にとっては相手を思いやっているつもりでも、結果的に必要な指摘を避ける形になっている場合が少なくありません。
注意した直後の部下の表情や態度が気になり、つい必要以上にフォローの言葉を重ねてしまう上司もいます。その場を和らげたい気持ち自体は自然なものですが、フォローが多すぎると本題がぼやけ、「結局何を言われたのか分からなかった」と受け取られてしまうことも珍しくありません。
かつて上司から理不尽な言い方で注意され、辛い思いをした経験がある人ほど、部下には同じことをしたくないと感じる傾向があります。筆者の知人のある40代の男性上司も、若手時代の経験がきっかけで「あの頃の自分のようにはなりたくない」という思いが強く、つい言葉を選びすぎてしまうと振り返っていました。過去の経験が反面教師になっている分、伝え方そのものに慎重になりすぎてしまうのかもしれません。
伝える前から部下の反応を想像し、言葉を選びすぎてしまう上司も少なくありません。丁寧に考えることは悪いことではありませんが、先読みが行き過ぎると当たり障りのない表現に落ち着き、伝えたいことの半分も届かないということが起こりがちです。
「今言うべきかどうか」を迷っているうちに、注意する機会そのものを逃してしまうこともあるでしょう。時間が経てば経つほど言い出しにくくなり、同じ課題が繰り返されるだけでなく、部下自身も「これでいいんだ」と受け取ってしまう可能性があります。
注意をするときは、部下の人格ではなく、その場の行動に焦点を当てて伝えることが大切です。「あなたは〜だ」ではなく「この場面では〜してほしい」という言い方に変えるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。人格を否定されたと感じさせないことが、素直に受け止めてもらうための第一歩になるでしょう。
感情に任せて話すと要点がぼやけてしまうため、何を、どの順番で伝えるかをあらかじめ整理しておくと、迷いなく落ち着いて伝えられます。伝える内容を一つに絞るくらいの気持ちでいるほうが、部下にとっても受け取りやすいものになるはずです。
注意した内容がその後どう受け止められているかを、日を置いて確認することも欠かせません。一度伝えて終わりにせず、「あの件、その後どう?」と軽く声をかけるだけでも、伝えた内容の重みが変わり、部下との関わりも途切れずに続いていくでしょう。
部下に甘くなってしまう背景には、嫌われたくない気持ちや自分自身の過去の経験など、さまざまな事情が重なっています。大切なのは厳しさを避けることではなく、伝え方を工夫すること。人格ではなく行動に焦点を当て、伝えた後も関わり続ける姿勢を持つことで、部下との向き合い方は少しずつ変わっていくはずです。
Written by 佐和