これは、私がまだ20歳になるかならないか、という頃のお話です。

「お前のケータイ、俺の知らない男のアドレスが入ってるぞ!」当時付き合っていた彼のベッドで寝ていた、夜中2時。電気がつくよりも前にガラスが飛んで来て、壁で砕けました。私は裸足で、ほとんど裸のような格好をしていて外に助けを求めるのも難しく思えたので、じっとガラスの破片を見ていました。私は今日で死ぬんだろうか。絶望の夜は、いつも丑三つ時から始まるのです。

 

さぁ、そろそろ明るく楽しくDVの話をしよう

【婚活はつらいよシリーズ6】DVはスウィーツ? 埋まらない穴と、ヤメラレナイ心理の話をしよう

お世話になっております。株式会社たかだまなみです。本日はやっとこの話ができてテンションが上がっております。私のミッションは重くて暗い話を、いかに面白く伝えるかにあります。「私がかわいそう」という話をしたいのではありません。誰の心にもある(もちろん普通はうまく隠されている)暴力性、凶暴性、嫉妬、我儘、優越感などがどういう理由で表出するのか。そんな話ができれば良いと思っています。

ダメ女は最初からダメではないのです。麻薬常習犯だって、生まれつきクスリに取り憑かれている訳ではないですよね。どのようにダメな恋愛にハマっていくのか。どういう理由があって落ちていくのか。何か悩んでいる人や、友人を助けたい人のお役に立てれば幸いです。いつか危ない恋愛に陥りそうになった時に思い出してもらえれば、それも嬉しいです。それでは、物語の続きをどうぞ。

 

ダイスケとの楽しい日々

【婚活はつらいよシリーズ6】DVはスウィーツ? 埋まらない穴と、ヤメラレナイ心理の話をしよう

友人の紹介で知り合ったダイスケ(仮)は、長身でいかにも力の強そうな体型でした。彼は医者の卵。両親は金持ちかつアホで、学生のダイスケに高級車を与えていました。学校帰りに御殿場のアウトレットモールまでドライブしたり、週末は箱根にデートに行ったり。欲しいものはなんでも買ってくれました。まさに、漫画にあったようなデート! 上京したての田舎娘の私は、東京のネオンにあてられたのか、革張りの車のシートに溺れたのかわかりませんが、とにかく彼に夢中でした。

ダイスケからの暴力は付き合って半年くらいで始まったと思います。理由は覚えられないほど些細なことです。最初は突き飛ばされただけだったのですが、彼は泣きながら土下座して謝りました。「もう二度としない。まなみがいないと俺、死んじゃうから……。」私も本気で、彼には私しかいないと情が湧いてくるのでした。

 

「彼は良い人、ちょっとキレやすいだけ。」
(ペンネーム:ダメ男好きまなみさん/学生)

【婚活はつらいよシリーズ6】DVはスウィーツ? 埋まらない穴と、ヤメラレナイ心理の話をしよう

その夜は「俺を裏切るつもりだな、このクソ女が!」というようなことを言っていたと思います。私が恐怖で動けず横たわっているベッドを踏みつけて、足で壊し始めました。なんという不幸、彼は砲丸投げのインターハイ選手。凄い力です。当然ベッドが壊れるのだから、私も踏みつけられて怪我をします。ギャフン! 内臓とび出る! 上から出るのか、下から出るのが先か。

横になったまま助けて、と金切声をあげるのですが、私の頭の中はというと「明日は声楽のレッスンなのに、こんな声だしたら声が出ないなぁ。」と能天気。殺されるかもしれない辛すぎる現実とのギャップを埋める為に、脳が能天気なことを考えてバランスを取っているのかもしれません。何度かは近所の通報で警察が見回りにきたりもしました。

数日後。壊れたベッドを捨てる為、粗大ゴミ回収を頼みました。回収に来たお兄さんは「え?このベッド、なんでこんな壊れたんですか?」まさか、足で踏んづけて壊されたとは言えませんでした。(そして自分もあざだらけだ、とも。)

暴力を振るう人あるあるですが、暴れた後は異常に優しくなるか、自殺しようとするかどちらかなんです。例に漏れずダイスケは「まなみがいなくなったら、俺は死ぬ!」と叫びながらロキソニンを一箱飲み込みました。(良い子は真似しないでね!)看取るつもりで、彼のそばにいたのですが、意外と彼の思い通りにものでして。まだかまだかと待ちづつけたら朝になりました。日本の製薬会社は、こういうバカな人間を簡単に死なせないために研究してくれているのでしょう。本当にありがとうございます。

 

ケータイ電話は壊されるのが常識だと思っていたあの頃

デートDVや家庭内での暴力にあってきた女子たちと話してきて「ケータイ電話は壊されるのが常識」という法則を発見しました。友達と隔離し、家族を敵だと洗脳するのは暴力を振る人の得意技です。情報から断絶することで、自分の犯している罪を漏らされないだけでなく、彼こそが絶対神であり唯一神であり破壊神と信じ込ませることができるからです。

俺様教の熱心な信者であった私は、自分の大切な時間やお金、労力をせっせと貢いでいきました。きっといつか変わってくれる。だって普段はこんなに優しいんだもの。みんなダイスケの良いところが見えていないだけ。「俺は母に可愛がられず育ったし、殴られて育ったから他人を殴ってしまうのかも……。」と悲しそうな顔をする彼だもの。きっと良くなる。絶対に……。

 

「別れるわけないじゃない! こんなに愛しているのに!」
(ペンネーム:ダメ男サイコーまなみさん/学生)

人は何にでも願うものになれる、と言います。努力と運があれば、どんな夢も叶うのかもしれません。その逆もあって、どんな辛いことにも慣れることができますし、痛みも忘れることができるのです。(そんなことをしていたら、記憶がすっぽり抜ける症状に困ることになりました。私の記憶返して〜〜!)

また違う日の夜中2時。彼の手にはゴルフ・クラブがありました。球は私の役目! 抵抗してさらに殴られるより、大人しくしていた方が良いのでじっとしているのが得策です。「休みの日は彼氏と過ごすのが普通とちゃうんか!!!」ダイスケの束縛は「愛してる」に聞こえてしまうんです。

あれ?おかしさに磨きがかかってきましたね。私の夏休みに親友の実家に遊びに行くという話にカッとなった彼は、私が東京を離れている間も「殺してやる」と留守電を100件以上入れていました。ダイスケ、ヒマすぎ〜〜。

月に一度くらいだった暴力は週に一回、週に三回、そのうち毎日になりました。暴力は嫌いでしたが、彼のことは大好きで、1日でも離れると寂しかったのです。付き合ってから一年たっても、まるで付き合いたての頃のようにドキドキし、「どうやったらこの人とずっと一緒にいられるんだろう。」私の頭の中はそのことでいっぱいでした。

 

DVはいちごのケーキの味

【婚活はつらいよシリーズ6】DVはスウィーツ? 埋まらない穴と、ヤメラレナイ心理の話をしよう

よく不思議に思われることの一つに「なんでそんな人と付き合い続けるの?」ということがあります。痛みは最初は辛いものでしかないのですが、そのうち感じ方に変化があります。恐ろしいことに、痛みはどんどん「キモチヨク」なってくるのです。

暴力はいやだと思うのは誰でも当たり前ですが、そのうち自分の人権が剥奪されるようなことすら、キモチイイと感じてくるのです。これが、いくら他人が「あんなやつやめておけ」と言っても別れられない原因の一つです。(あくまで一つにすぎませんが。)甘いものをやめられないように、痛みもまた、やめられないものなのです。

そんなこんなで、理性では「だめ、殴られるなんてだめ!友達にも家族にも迷惑かけてる!」と思うのですが、心の底ではダイスケを見放すなんて不可能、という状態になっていました。二つの相反する考えにとらわれる時、人の心は引き裂かれ、壊れていきます。私の身体はただ彼に操られるだけのイレモノで、自分の思考はありません。自分が嫌だと思うから別れる、という当たり前すぎる考えも無くなります。暴力の刺激か、それ以外の刺激がない状態か、その二つしか私の世界を構築するものはなくなっているのです。

 

「あいつはただのケダモノ。早く牢屋に入ればいいわ。」
(ペンネーム:アイカ/秘書)

突然失礼します。私は株式会社たかだまなみの秘書、アイカです。たま〜に出演料をいただいてまなみ社長の記事に出てるの、よろしくね。実は社長とは学生の頃からの長い付き合いなの。私が社長と知り合って一年くらいした頃かしら。「階段から落ちた」「今日は車にひかれた」と社長がおかしなことを言い出すんです。もちろん、すぐ嘘だってわかったわ。なんでかって?だって身体のあざを見れば一目瞭然だもの。

私がいくら忠告しても聞かないから、私が警察に社長を連れて行って相談するよう勧めたんです。私もまだ飲酒もできないくらい若かったから、ダイスケとかいうゴミがすぐに逮捕されると思ったんだけど、全然違った。暴力は現行犯じゃないと逮捕できないんですって。ため息しか出なかったわ。金持ちか医者か知らないけど、早く牢屋に入るか、土に還るか即刻選択させたいところだけど、社長は「それでもダイスケのことが好き」とばかなこと言うから、私もどうにもできなかった。(ま、それから10年、こんな感じでダメ男に次々と引っかかる歴史を間近で見て、闇の深さに圧倒されたわよ。)

 

しろたんと終焉

【婚活はつらいよシリーズ6】DVはスウィーツ? 埋まらない穴と、ヤメラレナイ心理の話をしよう

いつも足りなくて、空腹で寂しい。一人で眠ることができない。誰のどんな肌のあたたかさでも良い、私がここに存在することを認めて欲しい。ひとりでいると地上にいても、溺れているようで息ができない。最後にはそんな寂しい気持ちすら、わからなくなっているのでした。

その日は首をしめられて意識が落ちました。「あ〜あ、死んだな。死んだのかな。お母さんごめんね。」と思いましたが、しばらくして目が覚めました。その時の気持ちは喜びはなく、また目覚めちゃったなと少しがっかりしたのです。首が腫れて見るからに痛々しいのに学校には笑顔で行きました。それを見た大学の先生が学生センターに通報。「テスト期間だけど、今日の便で実家に帰りなさい。」と私は実家に強制送還。(テストは後で受けさせてくれました。)それでやっと縁が切れました。

しばらくして東京に戻ると彼からしろたん、と言う可愛いゴマフアザラシのでっかいぬいぐるみが送られてきました。彼は恐ろしい暴力性を持っていましたが、部屋いっぱいにぬいぐるみを集める素敵な趣味があり、俺の代わりにとしろたんを送ってきたのです。今考えると病んでる感満載の完璧なキャラ設定でしたね!

 

私らしい人生のスタート

本当にダイスケからは色々なことを学びました。包丁で他人を切ると自分も手を切ってしまうとか、睡眠薬で死ぬのはすんごい大変なことだとか、殴られるので殴り返したら「暴力だ!警察に言う!」と言われること、怒りすぎると嘔吐する人がいるとわかったことや、高速道路で降ろされると結構おおごとになること等々です。

「それでも男の人といたい?そんな自分と一生付き合いたい?まだ希望はあるだろうか。私が死なないでこれからも生き続ける理由はあるのかな。」これがたかだまなみ20歳の日記に書いたことでした。

同じ質問に今の私は強く、明るく答えることができます。「絶対にだいじょうぶ。あなたを死なせはしないし、幸せにできるのは私だけ。そのために何ができるのかを知るため、今日も生きるよ。」

私らしい人生と婚活が、今、ようやく始まったのです。


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